ジャングルの閉門時間が迫って来ましたから、そろそろ引き返そうと歩き始めました・・・ところが、急にネイチャーガイドのシタラム氏が、道の端の薄く残った足跡を示し、今しがたまでここにベンガルタイガーが居たようだと言うのです。それを聞いてメンバー全員驚いてしまいました。
しばらく皆その場所にたたずみ、何かを探るように周りを見渡しました。シタラム氏は、ベンガルタイガーの匂いもしていると言うのです。そう言われると、何となく獣臭がするようでした。
道からそれて、シダ類がうっそうとしている樹林帯の中へゆっくり歩みを進めて行きました。そこは、私達が、歩いていた道を右側にそれたところでした。
ハヌマン・ラングールは何やらあわただしく木から木へと移動をはじめ、シカは警戒音を発し、野鳥も何だかあわただしい声を発していました。
やはり、この様子は・・・ベンガルタイガーが居るのかも知れない・・・ドキドキして来ました。更に奥に進んで行くと、シタラム氏が内緒話のような小さな声で「あそこにいる」と、指を指した先を見ると、樹間に黄色と黒の縦縞が見えました。
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あっ!!いた!!と思ったら、ベンガルタイガーが迫力ある声で「ギャ~~オー」と啼き、歩き始めたような足音がしたので、皆反射的に走り出そうと・・・もちろん逃げようとしたところを、シタラム氏に止められました。ベンガルタイガーを刺激しないよう、静止していることが一番重要なのだそうです。
私たちは、心臓が飛び出そうな緊張感で皆かたまっていました。野生のベンガルタイガーの声には、本当に表現し難い本物の迫力がありました。
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シタラム氏は、ベンガルタイガーの状況を確認するため、先に7,8歩進んだところ、私たちの後ろから、他グループがベンガルタイガーの声を聴いてやって来たのです。その際の足音を聞いたベンガルタイガーが、先ほどの啼き声に怒りを込めたような迫力を増した「ギャ~~~オ~~~」・・・そして、突然のジャンプ・・・シタラム氏のほんの3m位先をジャンプをして横切って行ったのです。
ベンガルタイガーは、シダを踏み越えて素早く横切って行ってしまいました。あまりの速さにカメラのシャッターが間に合わず・・・折角のベンガルタイガーの全体像を残す事が出来ませんでした。
ロッジに戻って来てからも、ベンガルタイガーとの遭遇した時の緊張感は続いていました。シーズンオフの今、ベンガルタイガーに会えた事は大変幸運であったようです。
文:しぇるぱに 画:Nどん