ニューヨークの街角のあちらこちらで見かけるホットドッグの
屋台。
安く、早く、手軽なので、移動中や、これから映画を観て、
そのあとで夕食を食べるけれど、少しお腹に何かを入れて
おきたいという時に、パクっといただけるので、便利な食べ物です。
味やクオリティは、どの屋台も同じようなものだと思いがちですが、
イスラム教の律法にのっとった食べ物であるところのハラル・フードの
屋台のホットドッグがおいしい(と、筆者は思う)。
子羊やチキンを焼く鉄板で一緒に焼くと、お湯でゆがくよりも、
ソーセージの味がよりいっそう活きるからでしょうか?
値段表を出している屋台と、そうではない屋台があるので、出して
いない屋台では、注文する前に値段を確認した方がよいです。
観光客相手に、ホットドッグでボル人がいるので。これ、本当です。
一般的に、ニューヨークでのプレーンなホットドッグは、1本2ドルから
2ドル50セントです。
1ドルという良心的な屋台もあります。
ところが、値段を確かめずにとりあえずオーダーし、受け取る時に
なって、「はい、3ドル25セントね」と言う屋台の人もいるのです。
「ファースト・フードで抗議したり、言い合いするのも面倒かあ・・・」と
日本人は思ったりして、高価なホットドッグをいただくはめになることも
あるので、お気をつけ下さい。
セントラル・パークの南側の広場で、ある人が店じまいをしかけた
ホットドッグの屋台で、1個注文しました。値段が1個2ドルという表記を
見たあとに。
屋台で売っている人は、この職業では珍しい、70歳過ぎくらいの
女性でした。外国のアクセントを持つ、純朴そうなおばあさんです。
そのおばあさんは、ソーセージが入っている鍋のような箱の中から、
フォークを使ってソーセージ1本を取り出し、パンの割れ目にはさみました。
ケチャップとマスタードを、それにかけるかと思いきや、再びフォークを
箱の中に突っ込み、ソーセージをもう1本取り出すやいなや、なんと、
それをパンにはさむではありませんか。
つまりパンにソーセージが2本はさまれたわけです。
その不思議な光景を見ていた、その男性客は「店じまいなので、余った
のをおまけにしてくれたのかな?」と思いました。
そして、そのおばあさん、そこにケチャップとマスタードをかけて、客に
手渡しながら言いました。「4ドル」。
「は? 4ドル?・・・ 何、これ?」
そう言いながら、客はおばあさんの顔をまじまじと見ました。
おばあさんは、「あんた、ホットドッグがほしいって言ったでしょ。
だから・・・ むにゃ、むにゃ」と語尾をごまかしながら、夕暮れ直後の
セントラル・パークで、哀れそうな眼を客へ向けたのでありました。
残り物を押し売りされた(であろう)その客は、返す言葉もなく、1個の
パンの中に、ソーセージ2本が詰め込まれたホットドッグを食べ、その後、
胸焼けになったのでした。
(その客とは、筆者です)