ダッカの中央駅、コムラプル駅。エッジの効いた外観と
効きすぎて鉄道駅っぽくない雰囲気(?)と、そして鉄道がさほど発達していないバングラデシュ(河の国ですから)だけあって、インドの駅前のような活気はありません。落ち着いた雰囲気です、とカバーしときます(笑)。
そんなコムラプル駅、西側にはバングラ商業・金融業の心臓部モティジール。
南西はバスターミナルとダッカ旧市街への入り口として有名なグリスタン。
有名な観光地やショッピング街、ホテルなど、ダッカを観光で訪れるかたならば、ほとんど「コムラプル駅の西側」で用が済んでしまいます。それくらい、中央駅が「中央」にない印象です。ちなみに「河の国」バングラデシュで伝統的に長距離移動に使われてきたのは船舶。
最近ではバスが圧倒的。ときにジェットコースター化するとか…。
というわけで、ダッカに暮らして以来「コムラプル駅の東側って何あるん?」なんとなく気になっていました。「普通の住宅街なんやろなあ」とは思っていましたが。
そんなある日、モティジールを走り回る知り合いのリキシャーおじさん、ムハマドさんが「ウチ来なよ」誘ってくれまして。モティジールで待ち合わせして、キコキコと漕ぎだして
アルゼンチン国旗、長すぎ!てか、公共の道路に他国の旗、いいんか?!
さきほどのコムラプル駅前を南に下ると
線路を東に渡ると、そこはあこがれの(笑)コムラプル駅東側なのでした。
怪しさ大爆発のペイントカーに出迎えられました。
コムラプル駅構内の東側は貨物列車のヤードらしく、いかついトラックが頻繁に出入り。のせかえて、貨車で港町チッタゴンまで行くのでしょうね。
「あの建築中の、何? ホテル?」
「プライベートホスピタル」
どんどん小さな路地に入っていき
リキシャーの駐輪場!
雨期に水没しないよう、すべて竹で組まれた高床のスペースにぎっしりとリキシャーが。夜はもっと増えるのでしょう。入り口で、ここのボスが「なんで外国人がここ来とるんや?」みたいな顔で歓迎してくれました。
自分「あー、よく言ってる『ボス』があの駐輪場管理してるわけ?」
ムハマド翁「そう。新しいリキシャーとか買うときもボスから。普段から借り賃払ってるし」
自分「新しいリキシャー、いくら?」
翁「200ドルくらい」
ちなみに、彼自身は月3000タカ(約4400円)の収入と言っています。
ブラジル通り(勝手に命名)を進んでムハマドさん家へ。おじゃましまーす。
お孫さん(2才)が飛び跳ねてお出迎え。家はアパートの一角のふた部屋で、決して豪華ではありませんが手入れは欠かさず、ほかの部屋の人とも仲良く暮らしている、そんな感じです。コンロ回りが共用でした。
テレビもありますし(現在筆者自宅になし。東京時代から連続7年目)。
風通しいいうえに天井ファンがとなりあって2基(なぜだ!)あり…
▲このネズミのキャラクターは…私、どこかで見た気がするのだが(笑)。
縦に立ったナイフで、奥様が野菜を切りまして
鶏と玉子のカレーをいただきました。食後は完熟マンゴー!
▼ちなみにこの家は「アルゼンチン派」だそうで。
ワールドカップが近づいて以来、「アルゼンチン派?ブラジル派?」は立派な話のタネです。
食後はおしゃべりのあと、そとへ散歩。次第にこんな空間がぽつぽつと
そしてついに
沼地とも草原ともいいがたい、不思議な景色の場所にきました。
翁「これからの雨季、水でこのへん浸かっちゃうのね」
自分「だからぜんぶ高床なんや!」
水上住宅、聞こえはいいけど蚊が凄まじそうです…。
冠水したら、船で渡ってゆくか
こんな竹の橋をひたすらたどってゆくか
人通りの多い場所は、土手道をつくるみたい。
ここにもリキシャーの車庫が。モティジールやグリスタンに近いので、このエリアから出かけるリキシャー乗りが多いのでしょう。それよりも、こんなのどかな景色がダッカの中心から15分の場所にあるなんて!
自分「君はブラジル派?アルゼンチン派?」
牛「別に…」(笑)
ダッカにはめずらしく猫のいるチャーイ屋で一息していると、外国人がいるのに気づいた近くのお母さんが「犬連れてきて!」と息子さんにせかしまして、果たして連れてくると、パンをひときれ取りだし
母「クッター(犬のこと)! 食べろ!食べろ!撮れ撮れ!」
自分「おばちゃん、そのセンスめっちゃいい」(笑)
ムハマド翁「あんなあ、30年前は、ボナニもグルシャンもさっきみたいな景色だったんやぞ」
自分「あの、雨で水浸しになる?草原+沼みたいな?」
翁「独立してから、政府が急に開発進めて、陸地にしたのね」
自分「いま、ボナニ湖しかないけど」
▲ボナニ地区とグルシャン地区の間に広がる、ボナニ湖。
国土にほとんど高低差がなく、降った雨がなかなか海に流れないバングラデシュでは、乾いた土地をつくるには大変な努力が要るのでしょう。現在のボナニ・グルシャンはボナニ湖面より数メートルも高くなっていて、そこが高級住宅地とされるゆえんかもしれません。
というわけで、リキシャーおじさんの家を訪れただけでなく、普段の観光ではまず行かないエリアで、意外な景色に出会えました。「ダッカの外にこそ面白いものがある」バングラ人はよく言うのですが、ダッカだって、まだまだ驚きの場所があるみたい!
※ すべてのリキシャー運転手や街の人がいい人とは限りません(圧倒的に親切な人の多いのも事実ですが)。見知らぬ場所へ案内されるときは、身の安全には充分気をつけて。ときにはきっぱり断る勇気も必要ですよ。