※ この記事には動物の犠牲(と畜)の写真・動画があります。
ご了承のうえご覧ください!
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というわけでコルバニ・イード、犠牲(クルバーン/コルバーン)祭(イード)の名のとおり、生贄を神さまにささげる時刻がやってきました。
モスクでのお祈りを終えた正装の男たちの手にナイフ。この後ろについていけば見れるんやな…と思っていたら、こういうときの行動(だけ?)は早いぞ! 「もう」牛を縛りだしよる!
まず、両脚ずつ、こそっと縛ります。どれくらいこっそりかといえば、もちろんうしくんが「もう」鳴かないくらいの…長い長い。で、横に倒す。前脚後脚の4本をさらにまとめる。
脚の動きを止めたら、樹につながるロープをほどいて、
体の向きを変えます。
自分「脚がメッカの向きなん?」
兄ちゃん「そうそう!」
イスラムの儀式なので、聖地メッカの方向(西)に相対するのがしきたりなんですね。でもちょっと南向きすぎてた気が(笑)。続いて、神に生贄をささげる剣のひと刺しめの大役を担うは、牛を買った一家のあるじ。もちろん純白のパンジャービー正装氏です。
この間、見ている人たちは小さく「ビスミッラー、ビスミッラー」つぶやいていました。「神(アッラー)の御名において…」という意味。頸動脈を切って失血死させる方法。ところで、面白いことにこの「切りかた」、イスラム教とヒンドゥー教は正反対なんです。首の半分くらいまででムスリムが止める決まりに対し、ヒンドゥーがヤギや羊を生贄にするときは、一気に首を斬り落とさないといけない。首都ダッカでも旧市街のダケシュワリ・ヒンドゥー寺院にはそんな場があって、その場から採った犠牲の血のしみこんだパウダーは、婚礼の儀式とかで使われる神聖なものなんですって。
で、しばらく放血させて…と思いきや、ここからが今日の主役の登場です。700文字目にしてようやくだ(笑)。
“二本ナイフをシャッシャカシャッシャカ”でお馴染み(?)のハイダルさんです! この人がそりゃま、スゴ腕でございまして。
むっちゃ速いがな! あっという間にヤギ2頭まで切りよる! シャッシャカシャッシャカ。おー、カッコいいぞ兄ちゃん。シャカシャカシャッシャカ。血糊がつかないようにナイフをすり合わせる音、めっちゃリズミカル。「職人の音」って感じです。
シャカシャカ。
自分「いつもはなにしよん?」
ハイダル「モッグバザール!」
…の市場で毎日家畜を屠っていると。地名だけかい(笑)。
自分「どんくらい?」
ハイダル「いま30歳」
つぎに、首の下を胸のまで最初に切り広げて、体をひっくり返します。
ハイダル「ショービーショービー!」
自分「はいはい」
訳すと「写真写真!」。写真大好きバングラデシュ人のおかげで、大抵の画は撮れるのがこの国のいいところ! 宗教儀式だろうが命の現場だろうが、自分の仕事場を撮られるのが嬉しいみたいです。いいぞアニキ! こっちもガゼンいい写真撮る気になるもんね。あとで見返したらとても掲載できない血しぶきショットとかあるけど…。
シャッシャカ、シャキシャキ。
腹からお尻に向けて皮を開くと、こんどは胴体と皮を離します。皮を傷めるといけないから(←皮革製品のもと)、一枚岩ならぬ一枚皮で一気に剥いでゆきます。自分なんてまな板の上でもまともに切れんのに、この牛は曲面だらけの立体やぞ! と驚きつつ…サクサクシャカシャカ。
「撮れ撮れ!」
「はいよはいよ」
作業が早いからビデオにするか写真にするか迷います…。
ここまで17分間。お腹を裂いて内臓を取り出す番。ここまでくると犠牲祭とか牛とかではなく、感覚が「ホルモン」や「ビーフ」になってきました(笑)。現金ですいません。うわー、キロ単位のロースや!とか。
人間の数倍もある牛の体を、ナイフ一本で無駄なくさばいていくハイダルさん。これぞプロフェッショナル。
でも写真も大好きです。これもプロフェッショナル?(笑)。
意外と霜降り入ってます。
解体はどんどん進みます。お皿の上でふだん見るサイズからは想像できないくらいの肉、肉、肉。
手前の大きな袋、胃だそうで。見ないとわからないものが多いこと多いこと。日本に住んでいると、パッケージになった「お肉」しか見ないものですが、こうやって命をいただく瞬間からずっと眺めていると、食べ残しなんて「おそれおおい」気持ちになります。血とか見て「グロい」なんて思う暇、全然なかったですね。
だんだん「牛の体」から「骨と肉のカタマリ」になってゆき…
牛を買った家の人々も手伝って、お肉を調理場へ運びます。
最後は、残った頭部の皮をぐるっと剥いで終了。何時や今?…うはっ、はじめから40分しか過ぎてない!
ちなみに、ヤギは先に頭を切り落として後肢から皮を取っていきます。
後ろ足の腱をぐるーり回して、樹から逆さにぶら下げて、
ナイフとこぶしで毛皮を離していきます。
2頭目のヤギになっても休憩すら入れないハイダルさん。すごい体力。
こんな感じで、私自身にとっても初の犠牲祭観察だったのですが、予想どおりというべきか、グログロしさがほとんど感じられなかったです。写真だけみるとグロいぞ!という声も聞こえますが。イスラム教のしきたりに則っていることや、食べることが前提で、無駄な屠殺ではないことがわかっているからかもしれません。あと、ハイダル兄さんの華麗な解体技術にホレボレしたのも大きかったり。ハイダルさんが牛一頭とヤギ2頭を捌くあいだ、となりの家の牛は1頭きりの解体すら終わっとらんかった! 仕事のあとのタバコがとてもおいしそうに見えました。
日本にいると「いのちの食べ方」にはどうしても鈍感になっちゃいますが、今回、バングラデシュであらためて感じた、「お肉」をいただくことのありがたさでした。
で、お肉ができたら食べねばならぬ! そういうわけで(笑)、次回は怒涛の牛肉&ヤギカレー家庭料理訪問記です。うー、いま思い出しても胃がもたれる…(笑)。