2016.11.01

Nyphil12_3

11月に入って、ニューヨークも次第に寒さを増してきました。

外出するのが億劫になりがちな季節ですが、アメリカ5大オーケストラのひとつ、ニューヨーク・フィルハーモニックのシーズンはこの寒い時期に本番を迎えます。

アメリカ最古の歴史を誇るニューヨーク・フィルハーモニックは今季で175年目のシーズンを迎えます。2009年から音楽監督の地位にあったアラン・ギルバート氏にとっては契約最後のシーズンでもあり、新たな出発を前にした彼の指揮ぶりは見逃せないところです。

今回はニューヨーク・フィルを鑑賞するにあたって、少しでも参考になるように、シーズンの見どころを簡単にご紹介してみることにしました。ひとつのシーズンは9月から6月までの長丁場になるので、まず、11月から2月までの範囲で見ていきましょう。

11月17、18、19日
この3日間は、次期音楽監督に就任が決定しているオランダ出身のヤープ・ヴァン・ズヴェーデン(現ダラス交響楽団音楽監督)が客演指揮者として登場し、チャイコフスキーの交響曲第4番を演奏します。来季以降のニューヨーク・フィルの音楽的方向性を占う意味でも注目されるプログラムです。

11月23、25、26日
ここから翌月にかけて、東欧系の名指揮者が二人登場します。まず一人目はハンガリー出身のイヴァン・フィッシャー。この日の後半プロで演奏が予定されているドヴォルザークの交響曲第8番はCDでも出ており、ニュアンス豊かな名演奏との評価が高いものです。そして前半プロは何度か来日しているデンマーク出身のヴァイオリニスト、ニコライ・ズナイダーによるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。こちらも円熟の名演奏が期待されます。

12月8、9、10日
東欧系名指揮者の二人目はチェコ出身のイルジー・ビエロフラーヴェク。現在チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者の地位にあり、名実ともに東欧系音楽の第一人者として活躍しています。今回の曲目はドヴォルザークの交響曲第6番。前半プロでは韓国のピアニスト、ペク・コヌクンを迎え、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を演奏します。

12月13、14、15、16、17日
音楽監督アラン・ギルバート指揮による、ヘンデル「メサイア」の演奏。
日本では年末といえばベートーヴェンの第9ですが、キリスト教国家アメリカではハレルヤ・コーラスで有名な「メサイア」が主流です。

12月28、29、30日、1月3日
世界的なトランペット奏者ウィントン・マルサリス率いるジャズ・アット・リンカーン・センター(Jazz at Lincoln Center)によるジャズとクラシック音楽のコラボレーション。音楽監督アラン・ギルバートの指揮でマルサリスの新曲「ニューヨーク」などが演奏されます。ジャズの街ニューヨークならではのユニークなニューイヤー・プログラムです。

1月11、12、13、14日
数多くのCD録音などで高い評価を得ている英国出身のピアニスト、スティーヴン・ハフが登場。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を演奏します。後半プロはアラン・ギルバート指揮でブラームスの交響曲第3番。

1月26、27、28日
この冬最大の目玉、チャイコフスキー・フェスティバル第1週。ロシア出身の名指揮者セミヨン・ビシュコフを招いて、重厚にして華麗なロシア音楽の真髄をたっぷりと味わっていただこうという好企画。
第1週目に登場するゲストはイスラエル出身のピアニスト、イェヒム・ブロンフマン。比較的耳にすることの珍しいチャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番を演奏します。後半プロはビシュコフ指揮によるチャイコフスキー交響曲第5番。

2月2、3、4、7日
チャイコフスキー・フェスティバル第2週はジャズの素養もあるロシアのピアニスト、キリル・ゲルシュタインによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番に注目。世界中によく知られた名曲をどのように料理していくかが見ものです。

2月9、10、11日
チャイコフスキー・フェスティバル第3週を飾るのは、クラシック音楽の最高峰の一つといわれる名曲中の名曲、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。この曲を得意とする巨匠ビシュコフによる渾身の指揮ぶりに期待が集まります。

2月22、24、25日
2月の最後に登場するのは現在89歳の大ベテラン指揮者ヘルベルト・ブロムシュテット。NHK交響楽団の名誉指揮者の称号を贈られていることで、日本の音楽愛好家にはお馴染みな存在です。今回のプログラムはベートーヴェンの交響曲第7番と第8番。老大家らしい円熟の至芸が期待されます。

以上、駆け足になりましたが、2月末までの見どころをご紹介しました。
3月以降の見どころは、次の機会にでも書いてみたいと思います。


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http://nyphil.org/

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