先日、日本芸術学園の方々がニューヨーク研修にいらっしゃいました。ミュージカルスター、エンターテインメント界の制作サイドを目指す専門学校の学生さん方で、今回は6泊8日間のスケジュールで、本場ブロードウェイのミュージカル鑑賞、ダンススクール、ボーカルスクールでのレッスンに加えて、今回はスペシャルプログラムで、現役のブロードウェイの若手アクターたちからのワークショップを特別に企画いたしました。
今年は歌中心の内容をご希望ということで、私が大好きなブロードウェイ女優、由水南先生にコーディネート、企画監修をお願いして、ボーカルワークショップと、歌と演技の融合のワークショップを実施いたしました。
由水南(ゆうすいみなみ)先生は石川県金沢市出身、小さい頃にバレエを始め、回転木馬(CAROUSEL 現在ブロードウェイにて上演中)というミュージカルを見て、私が好きなものがすべて入っている世界!とミュージカルの世界にすっかり魅せられ、日本で高校生まで英語や演劇を勉強し、アメリカの大学で演劇をみっちりたたきこまれ、現在ブロードウェイミュージカル、My Fair Ladyに出演なさっています。 王様と私、ミスサイゴン、マイフェアレディーと3作品続けて、トニー賞を受賞したミュージカルにご出演の快挙です。
ボーカルワークショップの講師は若手人気俳優のDevin Ilaw先生。ブロードウェイミュージカルミスサイゴンでトゥーイ役を熱演。劇中では嫌な役なので(主役のキムの元フィアンセ、キムに子供がいることに逆上しその子を殺そうとし、逆にキムに銃で撃たれ死んでしまう)正直それほど入れ込まなかったのですが(かなりしろうと的な見方でごめんなさい、でもそれだけ迫真の演技だったということですね)、若い女性ファンやおばさま方に騒がれていて人気がある俳優さんなのね、と思っておりました。
ウォームアップの後、先生からの課題曲を一人ずつ見ていただきます。まずはDevin先生の歌唱力にどびっくり。生徒さんにアドバイスしながら、少し歌うフレーズだけでも、もうそんじょそこらのシンガーと全然違うのです。これがブロードウェイで準主役をはれるということか…とものすごい実力に脱帽。また英語の歌で緊張する生徒さんたちをリラックスさせるために、終始楽しく場を盛り上げて下さいます。すっかり生徒さんたちもDevin先生のファンになった様子でした。
最後に質問で「ミュージカルを演じるにあたって何が一番大事ですか?」ということに対して、「ここです」と静かにすっと手で胸を押さえ、ハートだとおっしゃったのがとても印象的でした。ただほがらかで明るく楽しいだけではなく、ひとりひとりに的確なアドバイスをなさり、生徒さんたち一人ひとりがその場で自分がもっとよくなったのを体験できた、とても素晴らしいワークショップでした。
ワークショップ2日目は由水南先生の、歌と演技の融合のワークショップです。日本では、歌、ダンス、演技とそれぞれ別のものとして扱われることが多いそうですが、ニューヨーク流は別々ではなく、それぞれを融合するというアプローチでひとつの作品を作り上げていくそうです。
今回はせっかくなので日本の歌を用意してもらい、代表の生徒さんへの指導が始まりました。その歌の歌詞、内容について、ひとつひとつ分析し、生徒さんたち自身の経験に結びつけて、感情やエネルギーを引き出していきます。まわりでその様子を見ている生徒さんたちも、みるみる引き込まれ一体になっていき、みなさん涙があふれています。(実は私も生徒さんたちの歌が素晴らしすぎて途中から号泣)
最後のQ&Aのコーナーで「オーディションに挑むときのこつは?」「私は背が小さいのですがミュージカル女優になれますか?」という質問に対して南先生は、
「どんなときも楽しむ、たとえオーディションでも、緊張するとがちがちに縮こまっている人より、一緒に仕事をする仲間だったら、オーディションさえ明るく楽しんでしまうような人ががいいでしょ?結果はともあれ、その瞬間も楽しんだもの勝ち。」
「自分の個性を大事にして、自分で限界をつくらない、背が低いから、アジア人だから、英語がネイティブじゃないから、などいくらだってできない理由は自分でつけられるけど、それを言っても仕方がないので、逆に自分の個性として、私ってほらこんなに面白いでしょ?とアピールするくらいで望むの。もちろんそれには英語も歌もダンスもものすごく練習するんだよ。空には限界がない、私はこの言葉が大好きなんです。」
さすが美しい人は、心も美しく、口から発する言葉まで美しい…。
日本で生まれ育ち、ひたすら夢に向かいアメリカの本場で学び、数々のオーディションでの挫折や成功を繰り返し、現在、夢のブロードウェイの舞台へのぼりつめた南先生ならでは言葉の重みがあり、周りを動かすエネルギーというのはこういうものなんだということを目の当たりにしました。
これらのアドバイスは普通の毎日にも活かせそうです。
私も何かを一緒にやりたいと思わせるような人でありたい。
両先生ともに、彼らの今までの経験や学んだこと、持っているものを惜しみなく後輩たちに伝えていきたいという意欲にあふれ、とても素敵な方々でした。
日本芸術学園の生徒さん方もとても素直な皆さんで、先生方のアドバイスを一言一言受け止めながら目を輝かせている様子を見るとうれしくなりました。
さらに生徒さんたちから未来のブロードウェイスターが生まれるかも!?と思うととても楽しみです!
by あつ
同じテーマ「エンターテイメント」の記事
もっと見る →