2008.01.21


Je suis claustrophobe...
ジュ スィ クロストロフォーブ

(私は閉所恐怖症です。)

フランスの家、特にパリより北の地域の家というのは、

家の内装に非常にこだわります。

というのも、ノルマンディーやブルターニュ、ノール地方

冬は寒さが厳しく、暗く、雨ばかり降っているため、

家の中で過ごす時間が非常に多いからその分、部屋の

内装にお金をかけるようです。


ちょっと高価なアンティーク家具を配置したり、

アンィーク調のお皿を壁に飾ったりして、

部屋をデコレーションしている家が数多くあります。


しかしこのアンティーク調に整えられた家、

一見中世のような雰囲気でとても趣があって良いのですが、

住むとなると、また別です。

数年前、ノルマンディー地方のある友人宅を

訪れたときのことです。

そこの家も200年前の家を改装した、石造りの伝統的な家でした。
キッチンやリビングルームには100年前の

お皿が飾られ、各部屋のテーブルや椅子、洋服ダンスや

ドアも全てアンティーク。

そして事件はその日の夜に起こりました。

その家のトイレに行ったときのことです。

トイレのドアも繊細に彫刻された厚みのある木製のドアで、

トイレの中も小さな壁掛け棚に、アンティーク本や

アンティーク玩具が並べられていました。


用を済ませ、いざトイレを出ようとしたときの事です。

ドアノブを掴もうとしたところ、ドアノブが見当たらないのです。

「あれっ」と思い、ドアを押してみましたが、この頑丈なドア、

押しても引いてもうんともすんともいいません。


とりあえずトイレから助けを呼ぶと、

友人のお母さんが出てきて、

「Oh La La~ C'est Grave !」

(ウララー、セグラーブ 「あらら、大変だ。」)

と言っています。なにか深刻なようです。

このトイレ、ドアを閉めたら、なんと開かないそうなのです。
トイレに入るときにはドアを閉めたらいけないということです。

こんな民家が4、5軒ぐらいしかないノルマンディーの田舎村では、

鍵を開けてくれる業者などあるはずなく、

この高そうなアンティークドアを壊して私をトイレから

出してくれる気配もありません。

もしかしてこの寒いトイレの中で私は一夜を過ごすのでは・・・

と思うと、自分が閉所恐怖症であったことを

突如思い出し、恐怖が襲ってきました。

しかもここは日本から遠く遠く離れた異国・・・


トイレの中でパニックになりながら、

なんとか外界との境界を無くそうと、

友人に「なんでも良いから話しかけていて!」

と懇願しました。

ところが呑気なフランス人、

恐怖に怯える私を余所に面白がりながら

「明日の朝になればきっとなんとかなるよ。」

などと気楽なことを言っています。


結局、家中のドアノブをはずして、トイレのドアに

合うドアノブを見つけてくれました。
無事トイレから脱出。

トイレをアンティークで飾る前に、まずドアノブを付けて欲しかった・・・

と思いましたが、フランス人的には、まず見た目(外観)から、

そしてその後に、効率的や使いやすさ、という要素が来るようです。


ちなみに、このclaustrophobe(クラストロフォーブ 閉所恐怖症)

acrophobe(アクロフォーブ 高所恐怖症)と同様、フランスでは専門用語

になり、フランス人でもあまり使用しないようです。


(HISパリ支店 NI)

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    • 投稿: his-paris -2008年1月22日 (火) 09時36分

      ■フランス人にはいつも驚かされます
      これをカルチャーショックと言うのでしょうか・・・その後しばらくトイレ事件がトラウマになり、トイレのドアを閉めるのが恐怖になってしまいました。日本のウォシュレットが懐かしいです。。。日本のような快適トイレなら、一晩過ごせるかも・・・とふと思いましたが。

    • 投稿: pinko -2008年1月22日 (火) 00時32分

      ■大変!
      日本の朝から大変面白い話を読ませていただきました(わらいごっちゃないですよね・・)先に飾りありき・・・フランス人はわから~ん!!

    

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