ミスティ。日本でインド料理屋さんに行ったことある人なら、デザートとしてついてくる「砂糖を砂糖で煮詰めて砂糖をまぶしたもの」のような、甘すぎる物体に出会ったかもしれません(ヒンディー語では「ミターイー」といいます)。このミターイーをこちらベンガル語でいうと「ミスティ」。
このミスティ、特別な場合にだけ登場するのです。それは
「幸せなとき、お祝いのとき」
お客さんが来るとき、病気から回復したとき、誕生日、などなど、
日本でも、幸せな場には贈り物をしますね。結婚式のご祝儀や誕生日会、記念日。
ところが、バングラデシュではある一点が、日本と正反対なのです。想像できますか?
「幸せな人『から』、周りの人『へ』、ミスティを贈る」
物の流れが正反対! 彼らに言わせると理屈はこう。
「いま幸せな人が、友人たちからお金や物をもらって、さらに幸せになってどうするんだ?」
「幸せな人が、その幸せをみんなとわかちあうのが、いいじゃないか!」
ふーむ。わかったようなわからないような…。たとえば誕生日には「自分の誕生日を自分で祝う」、自前のお金でミスティを買って、「『俺の』誕生日なんだぜ!やったー!」と友人に配ることになります。ちなみに結婚式も同じ理屈で、新郎新婦(正確には新婦の親)が出席者に物やお金を配るのです。
物件の契約を結ぶときも、建物のオーナー氏が
ミスティを抱えてサインの場に現れたり、
とあるNGOの首脳を招いて講演していただくときも
彼「が」大量のミスティをもってきまして、
その場のみんなで幸せな時間を共有します。
ミスティについて思う疑問が、昔からありました。
…なぜ、こんなに甘ったるいの?? (ベンガル人でも「甘すぎる!」よく叫ぶのに…)
いろいろ地元の人に聞いたのですが、どうやら、「甘いもの=高級品」という価値観があるからだそうです。いわく、砂糖はかつての高級品。砂糖が多いほどお金をつぎ込んでいる、それほど幸せなんだよ…と。私は九州の出身なのですが、父親や祖母の小さいころ、薩摩揚げに砂糖を入れていたそうです…高級のシンボルだから。また母方の祖母のぜんざいは、これまた砂糖を大量投入していました。バングラデシュでは、砂糖と似た高級さのシンボルに「冷房が効いている」「照明が薄暗い(太陽が強い国だから)」があります。
さて、先日、日本がカメルーンに勝ちましたね。翌朝、案の定といいますか
ベンガル人「おー、日本おめでとう!」
自分「ありがとう!勝っちゃったよ!」
ベンガル人 (不敵な笑み)
…というわけで買ってきました。そのオフィスのもうひとりの日本人と割り勘して1090タカ(約1350円)。チャーイが1杯5タカのダッカでは、驚くべき大出費です。
朝、机の下に隠しておきまして、3時のおやつでサプライズ!という算段。それでも自分で我慢できなくなって(笑)
自分「今日、いいことがあとであるんだよー」
ベンガル人(45歳くらい)「んー、君が言うなら…ミ…(笑)」
自分「しーっ!しーっ!(笑)」
バレバレです。幸せなことなので大丈夫(ノープロブレム)ですが。
そして3時。30個x2種類を買ってきたのですが、全体の写真を撮る暇もなく一瞬でベンガル人の胃袋へ。なんだかんだ言って甘いものが大好きなベンガル人です。
ちなみにこのクダリ、つい先ほど、日本人がミスティ買うお話が「続く」ことになりましたね! あと何回買みんなに振る舞えるやら、楽しみでもあり、財布が心配でもあり。
最後に、ダッカに長く暮らす日本人先輩に「日本からバングラに来るときのミスティは?」聞いてみました。ダッカに住む私にとって、日本からダッカに戻ってくるのは幸せなこと、「ミスティイベント」なのです。すると
・和菓子はあまりウケない(バングラ人の味覚にない味なので)。
・なので、一般的な洋菓子がベター(たとえばバウムクーヘン)。
・ムスリムとヒンドゥーの教えを守るため、豚と牛由来の原料がないものを。
この条件、簡単なようで意外と難しい気が。ミスティ選びの道は険しく長い!?
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ロシュ ボナニバザール店(ミスティショップ)
<営業時間> 午前~夜(8時ごろ)
<定休日> 不定休
<場所> ボナニ地区の中心、ボナニバザール内。巨大ビル(上層階建築中)の隣。
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