ダッカの街中に暮らしていると、日本とレベルが違うとはいえ、なんでもすくそばで手に入ります。
毎朝行く屋台に並ぶチャーイ、パン、ミネラルウォーターだって、大きなボトルタンクで運ばれてきます。
いつものオジさんたち…ではなく、今日は彼らの後ろにある「バナナ」のお話。
「おいボンドゥー(『友だち!』の呼びかけ)、いいのが入ってるぞ」
「何の?」
おー!双子バナナ!
「コト?(いくら?)」
「5タカでいいや」
5タカ(約7円)はいつもは一本の値段。つながっているとはいえ、2本分を1本のお値段でとはお得な話です。しかも分割手数料負担なし。通販かい! ちなみにこのバナナたち、毎朝7時45分ごろ、チャーイ屋さんの少年が、房を大きなカゴに入れて持ってきます。バナナはベンガル語で「コラ(コーラー)」。ちなみに、南インドに「ケーララ州」という州があって、その「ケーララ」もバナナの意味です。たぶん元は同じ言葉なのでしょう。
大都市ダッカでは、他にもこんな方法でバナナが手に入ります。
(1) 房買い。路上のおばちゃんから、適当な本数をちぎって値段を聞きます。
「いま2人だから、小さいの4本でいいや」
「じゃあ、10タカ(約14円)ね」
(2) 勝手に称して「青買い」(青田買いではない)。八百屋さんから、まだ青々とした房を買ってきて、黄色に熟するまで待ちます。
「いくら?」
「さあ…(笑)」
一緒に歩いていたバングラ人のオジさんが、「外国人が聞くと高くなるからな」と。ということはかなり安いようです。
とすると、だ。ダッカですら青いバナナが手に入るなら、相当近いトコロから持ってきてるのか? 日本の輸入バナナみたいに手間暇かけているとは思えないし。そういうわけで今回のブログは題して、ダッカの「バナナの源流探訪」。
ちなみにウェブでバナナのことを調べていくと、バングラデシュはバナナの原産地(東南アジア)にかなり近いうえ、歴史的に伝播したのも相当早く、紀元前1000年紀(!)にはすでにあったのだとか。高温多湿で日照も雨も充分とくれば、たしかにバングラデシュはバナナにぴったりの土地ですね。
さて、ダッカから北西へ2時間、大河ジョムナ川をひとわたり
やってきたのはバングラデシュの北西部、ランジャヒ管区。(バングラデシュは7つの「管区」から構成されます。)
内陸部の夏季とあって、気温や日差し、湿気はダッカよりはるかに高い大地です。
その中でも東側(ダッカ寄り)のボグラという街から、世界遺産パハルプールへ向かう道すがら
バナナ、真っ青! しかも山積み!太い枝(本当は茎)がまでついてる! ということは収穫したてや!
「!」を連発せずにはいられないくらい、道沿いにバナナがひたすら並んでいるのです。それを小暇そうに眺める、バナナを運んできたと思われるオジさんたち。
皆さんも僕も、バナナの生産は「世界的大企業によるプランテーションにより大量生産され、現地の作業場で水洗いされたあと、トラックや保冷船で厳重に日本へ輸出される」なんて、社会科の授業で習いませんでしたか? もちろんフィリピン(日本でのシェア90%)やエクアドル(5%)などではそうなのでしょうが、バングラデシュは…違う! 道端にドン置きって、全然厳重じゃないやんか!(笑) 教科書で習ったことだって「源流探訪」すれば、意外な別の真実が見つかるんですね。
「百聞は一見にしかず、じゃよ」
「あなたたちの乗りかたも一見にしかず、ですよ(笑)」
さて、そのバナナ露店街を抜けると、明らかにバナナ運び帰りの荷車がぞろぞろ。そしてすぐに
バナナの木だらけの一帯へ。バングラデシュ人に聞けば、ボグラのこのあたりは、バナナの「源流」として有名らしいです。しかも、房がついた木がまったく見当たらない!一斉に収穫して一斉に出荷しよるんか? 「バナナは計画的に育成栽培され、安定的に供給される」的な、教科書の知識はまたしても崩壊…。
この周囲は、高い木が少なく開放感のあるほかの農村風景とちがって、背の高い樹木の多いところでした。降水量がさらに多いのか、土壌が違うのか、ともかくもバナナの栽培に適した土地なのでしょうね。
原産地でいだきまーす!
で、青バナナたちはトラックに載せられ、
いや、詰め込まれ、大消費地ダッカに向けて走ります。…下に積まれたバナナは大丈夫なんか?
ダッカに着けば、小さな荷車に載せかえられ
さらにリキシャーの荷物になって
青いものは、そのまま八百屋さんの店頭につるされます。
気温の高いバングラデシュにありながら、黄色く変色する前にダッカのお店にならんでいるのは、収穫からあっという間に運ばれている証拠です。新鮮バナナならバングラデシュで! 余計な設備を介してないぶん、きっとエコバナナでもあるはず! …そしてときには双子バナナが混じり、一本のバナナと同じ値段で売られていくのでした。今日もバングラの恵みにごちそうさま!
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「バナナ山積みの集落」はこんな位置です。
南にボグラ市街、国道550線(R550)を西に向かうと
世界文化遺産・パハルプールの仏教僧院群跡。
衛星写真でも、この周囲だけ緑が多いのがわかりますね。
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