バングラデシュは、イスラム教徒(ムスリム)が86%にものぼります。
そんなムスリムの大切な祝日が、「コルバニ・イード」。
今年のコルバニ・イードは、11月17日から。
ペルシア語の「クルバーン(犠牲)」とアラビア語の「イード」の合成語、つまり「犠牲祭」という意味です。全部アラビア語で表現する「イードゥル・アドハー」という言葉もあるのですが、耳にする割合は半々くらい。
この国では、牛と山羊を犠牲に捧げます。おとなりインドでは、牛を神聖視するヒンドゥー教徒が多数派なので山羊(と羊)が選ばれるそうですが、バングラデシュでは牛がメイン。噂では、インドから「神聖な」牛が大量に国境を越えて連れてこられてるらしい! もちろん、ダッカでもあちこちで牛が飼われています。
ダッカ支店のすぐ近く。高級住宅地にも牛。
で、牛や山羊は、飼っている人々からお金持ちの人々に売られ、17日の朝に生贄に捧げられる…といった具合。その売買の場が、「ハット」と呼ばれる臨時の市場。街中にはハットのポスターがベタベタ貼られております。下の写真のポスター、「ハット!ハット!!ハット!!!」連呼で書いてあるんですが、そりゃ「はっと」しますわな。…すいません。
ダッカ支店の近くにできた、ボナニ駅前のカウ・ハットに行ってきました。ボナニやその近くのグルシャン・バリダラ地区はお金持ちが集まる街だけに、高価なうしさんやぎさんが集まるそうで。
ハット向かいの歩道には干し草が山積み。オジさん、上で寝よる!気持ちよさそう。
ハット!ハット!!ハット!!! 牛!牛!!牛!!! そして人!人!!人!!! 大混雑です。明かりはありますが、基本的に狭く暗いので、そして牛のお尻のすぐ近くも通るので…ときどき「爆弾」のやわらかな感触が足裏に(笑)。
「牡の白牛」といえばインドでは一番神聖な牛のタイプですが(シヴァ神の乗り物なんで)、ここにいるということは…いやいや語るまい(笑)。とにかくガタイのイイ牛の次々出てくること!
うしくん「あー、俺食べるんだ―」(←想像)
自分「どっから来たん?」
オジ「ディナジプール」
自分「めっちゃ遠いやん!」
ディナジプール、ダッカから300キロくらいあるやんけ!「ダッカが高く売れるから」ですって。バングラデシュはお金持ちが首都ダッカに集中しているので、高価なモノや人は何でもここに集まってくるのです。
オジ「クシュテイアから」
クシュティアか…インド国境のすぐ近くやぞ。もしやインド産?
自分「いくら?」
オジ「ティーン・ラック」
つまり30万タカって…40万円か! 物価が日本の10分の1くらいの国でこの値段。30万タカ出せる人、ダッカならばいるんですね。地方の農家の彼らにとっては大収入のはずです。
こっちは35万タカ(約45万円)。この日聞いた中で最高額。大切な収入源の花道ですから、お飾りもしてあったり。いかに牛が大切にされているかが見た目でわかります。
ここで売り上げの一部を徴収。
ヤギさんを連れてきている人もいます。繁殖力の強いヤギも、貧しい人々の貴重な現金収入源。かのグラミン銀行の「マイクロクレジット」でも、農村の女性が子ヤギを購入して育て、高値で売って経済的自立を…なんて話を聞きます。と思ってこのオジさんに聞いたら「グルシャンから」ですと。すぐ近くの高級住宅地育ちかい!
オジ「これ、2万5000タカ(約3万3000円)」
やっぱ高い…。
ところで、バングラデシュにも15%ほど住んでいるヒンドゥー教徒。神聖な牛が、しかも街中で生贄にされるのは彼等にとってどうなん?と思いました。知り合いのヒンドゥー教徒氏に聞いてみました。彼は、もちろんビーフカレーは食べません。まわりがビーフのときは、特別に卵料理を用意したりしています。
自分「…で、コルバニ・イードはどう過ごすん?」
ヒン「普通に過ごすけど」
自分「普通って?」
ヒン「牛、犠牲にするの眺めたり」
自分「見るんはヒンドゥーもOKなんか!」
…ということらしい。他人様の宗教や習慣は別もの、という意識がしっかりしているのですね。バングラデシュ人からよく、この国はイスラム教徒とヒンドゥー教徒が互いの文化を大切に仲良く暮らしている、というお国自慢を聞かされるのですが、それは本当のようです。他の国(インドも含めて)でときおり聞く"宗教原理主義の台頭"なんてお話、バングラデシュに半年暮らしていて僕、一度も聞いたことありません。というか、ハットに誘ってくれたのもこのヒンドゥー氏やし!
そういうわけで、次回は白熱の(?)コルバニ・イード実況中継でございます。