ニューヨークを歩いていると、いろいろなものに出会います。
以前書いた〝地図屋〟 のお話で、地図の神様と言われたAndrew Hagstromという人が、ニューヨークの道という道を全て覚えていたという行(くだり)を書きました。
マンハッタンの道には縦の大通りavenue,横の streetに始まり、ダウンタウンやブルックリンの古いエリアに行くと alley,lane,placeなど全て基本は〝みち〟という意味なのですが、日本語的には〝小路〟だったり、〝通路〟だったり、の変わった呼び名が増えて、ビレッジあたりのplaceは袋小路の場合が多く、趣のあるものが多いのです。
west villageにあるPatchin place。1850年頃に建てられた10のレンガ造りの家に囲まれたゲートのある袋小路。かつては多くの作家が住み、現在は精神セラピストが何故か多く住んでいます。
左上の19世紀のガスランプは、マンハッタンに2つかしかないもの。そして現在は電気になっていますが、明かりがつくのはこれひとつだけ。
ここは袋小路というよりも中庭に近い。Milligan placeを囲んでアパートが建っています。
いわゆる私有地、private property。
MacDougal Alley。ワシントンスクエア北にあるここも私有地。
ビレッジあたりをあるくとこんな不思議なものにも巡り会います。
左:陶器のタイルで出来た開かずの扉。
右:画家で、映画監督のジュリアン・シュナーベルの家。サイケデリックなショッキング・ピンク。
周辺住民からは大ブーイング。
〝潜水服は蝶の夢を見る(The Diving Bell and the Butterfly)〟で2007年カンヌ映画祭で監督賞を取った人。
マンハッタン外に行くと、road, driveという味も素っ気もない名前が増え、単に33Rd.、45Dr.などの数字+Rd. or Dr.表記になり、覚えにくいことこの上ないのです。
そして、ある日、私の宝物の地図を見ていてマンハッタンにたったひとつしかない道の呼称を見つけました。
それが〝Mews〟
辞書には
( ~)英[1](昔, 住宅街の裏側の広場や通りに並んだ)馬小屋; 馬小屋の並んだ広場[通り].[2]馬小屋改造の(しゃれた)アパート[ガレージ](の並ぶ広場, 通り).
とあるように、ロンドンにはRoyal Mewsに代表されるように多数残っています。
そしてここマンハッタンにあるのがWashington Mews
マンハッタンの標識は主に緑と茶色。茶色のエリアは歴史景観保存地区。
ここの歴史を紐解いてみると、もともとは地域住民の馬小屋の集まりだったものが、ニューヨーク大学(NYU)のオフィスや家などに改装されたもの。
そしてその外観は、ほぼ当時のそのままのものが残っていて、昔の面影を今に伝えている場所なのです。
右の赤い建物はLa Maison Française というNYUにおけるフランス文化活動の中心。史跡。
その向かいにはDeutsches Hausという建物もあり、現役で活躍中。
何気なく歩いている〝路〟も、ちょっと気をつけて歩いてみるといろいろな発見があるもの。
ガイドブックとは違う角度から街を眺めつつ観光などしてみても愉しいかも。