ヴェネツィア北東に位置するアドリア海沿いの小さな町。南北約18㎞、150平方キロメートル強のこの町は、海に面する美しい広い浜辺が知られており、イタリア人はもちろんドイツやオーストリアからのヴァカンス客の多いリゾート地です。
町のシンボルは、チェントロ・ストーリコ(旧市街)のドゥオーモ。珍しい円柱の鐘楼が美しい11世紀の建造物です。
そして、ビーチの先にちょこんと突き出した砂州に建つ趣のある聖堂。まるで灯台のようです。
「サントゥアリオ・マドンナ・デル・アンジェロil Santuario Madonna dell’Angelo」。日本語にすると、「天使の聖母聖堂」。
海に突き出したこの場所に建っているため、海の荒れた日には波が足元まで押し寄せます。何度も波に洗われた歴史もあります。
18世紀には大潮のために聖堂は水に浸かったのにも関わらず聖堂内は水に濡れることがなかったのだとか。それはマドンナによる奇跡だとされています。また海から町を救う救世主として、人々の祈り&蝋燭の炎は現在も絶えることがありません。
遠くから見るその全景に、何か特別のものを感じずにはいられません。何かを訴えているような感があります。
そしてそこから延びるルンゴマーレlungomare(海岸線)。夏の夕方にはいい夕涼みの散歩コースになるこの場所は、波よけの大きな岩が積まれています。
このルンゴマーレの岩のあちこちに彫りこみが施されているのです。ヨーロッパを中心とした世界中の彫刻家およびその卵たちの国際大会のようなものが催されたもの。
もちろん今もなお残されており、ここを歩く人々の目を楽しませてくれます。岩に浮き上がったような彫刻は、夕暮れ時には少々恐ろしいかもしれませんが・・・。
この町はヴェネツィア周辺のほかの町と同様、夏のリゾートと漁業の町。
夏場は海水浴客が大挙するのですが、今の時期はまだまだとても静かでのどかな雰囲気。チェントロも扉を固く閉ざしている店も数多くガランとしてはいますが、カラフルな壁と立ち並ぶそれらの建物は可愛らしく、おとぎの国に迷い込んだかのよう。
今もなお残されている魚屋の店先。海での安全を守る聖母が掲げてあるのが印象的です。
そして、漁業の町ならでは、魚介料理を味わう食べ物屋が小さな町ながらにたくさんあります。そのうちの一軒、「オステリア・ヴェチアosteria vecia」。
オステリアですが、スパゲッテリアとの表示もされています。魚介を使ったパスタが人気なのでしょう。
早めの夕方、店内に入ると、馴染みの客たちがワイン片手におしゃべりに花を咲かせています。
小さな店内、夏は店の外まで人が溢れ返るのが想像できます。
カウンター脇のガラスのケースには、種類こそ少ないものの美味そうな総菜が…。
ここでの人気は揚げたてのカラマリ(ヤリイカ)のフリット。たまたま遭遇したのが、この時だったのかどうかは定かではないのですが、ほとんどの客がこれを注文しています。
隣のテーブルもその隣も・・・。山盛りのイカのフリットを食べています。そしてそれを見た他の客もまた注文。
柔らかくて、潮の味のするフリット。新鮮だからこそ、の味です。
Hosteria Vecia
Fondamenta della pescheria,2
30021, Caorle (Venezia)
Tel;0421210518
記事&写真提供:特派員白浜さん