「最も強い者が生き残るのではなく、
最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」
そんな言葉を残したのは自然科学者であり、
進化論を説いた「種の起源」の著者としても有名なダーウィン。
餌が食べやすいように甲羅の形を変えて生き残ってきたゾウガメ、赤道直下に生息する唯一のペンギンガラパゴスペンギン、
スカイブルーの足が美しいアオアシカツオドリなど。ガラパゴス諸島に位置する島には、
独自の進化を遂げ、今でも生き残っている動物たちが多数生息しています。
そんなガラパゴス諸島は、
1978年にユネスコ世界遺産の第1号として登録された12ヶ所のうちの1つ。
一生のうちに一度は旅行してみたい。
そう思う人も多い「ガラパゴス諸島」。
ここは、独自の進化を遂げた動物たちが一同に会する、世界でも珍しい場所なのです。
今回はガラパゴス諸島の旅の行程をたどってみましょう。
ベストシーズンはいつ?
ガラパゴスの気候は大きくわけて2つ。
12月~5月がドライシーズン(乾季)、6月~11月がウェットシーズン(雨季)です。
ここで注意点が。ドライシーズンと言うと雨が無いように思いますが、
乾期のドライシーズンに雨が降り、雨期のウェットシーズンには雨が少ないんです。
雨季は本格的な雨は降らないものの、
霧が上空を覆い曇っていることが多く、逆に乾季はぐずつく天気は少ないものの、
1日1回スコールがざっと降るため、総雨量が多くなります。
ではいつ行くのがベスト?
何を楽しむかにより、お勧め時期が違うんです。シュノーケルなど海も楽しむならば、天気が良く暑いドライシーズンが、
鳥たちの求愛行動やヒナを見るならウェットシーズンがお勧めです。
季節によって見ることができる動物やその行動も変わってくるので、お目当ての動物がいる場合は前もって調査を。
今回はこちらのツアーと同行程で旅をします。
ガラパゴス諸島の場所は?
ガラパゴス諸島は南米エクアドルの領土。
エクアドルの本土から洋上に1000km西に位置し、面積10キロ平方メートルを超える主要な13の島々と100以上の岩礁によって構成されています。
日本から向かう場合は、まずアメリカの都市で乗り継ぎ、エクアドルの首都・キトへ。
そこからさらに乗り換えてガラパゴス諸島のサンタクルス島へ向かいます。
ただし、キトで同日に乗り継ぐのは難しいので、宿泊をしなければなりません。
せっかくなので、2泊ほどしてキトの観光も楽しむのがおすすめです。
キト市内観光から旅はスタート【2日目】
成田空港を夕方に発ってから、アメリカでの乗り継ぎ時間を含め23時間程でエクアドルのキトに到着しました。
時間はすでに夜の11時過ぎなのでそのままホテルへ。
エクアドルはそう来れる場所ではありません。せっかくなので、ガラパゴスへ向かう前に、キトの観光も楽しみましょう。
実は、ここキト市街も、ガラパゴス諸島と同じく第一号の世界遺産に指定されています。
サン・フランシスコ教会
1535年にローマカトリック施設として建てられた歴史ある教会。祭壇は金に彩られ荘厳な雰囲気が漂っています。
独立広場
キト旧市街の中心にある広場で、中央にはスペインからの独立を記念する像が立っています。
周囲には歴史ある建物が並び市民の憩いの広場です。
赤道記念碑公園・赤道博物館
キトの街の近くに赤道が通っており、そこに記念碑が建っています。また、近くには赤道に関する展示がされた博物館も。
赤道記念証明書ももらえ、キトでも特に人気のスポット。
パネシージョの丘
43mの聖母像が立っているパネシージョの丘からは、キトの旧市街と新市街が同時に一望できます。
カテドラル
1572年に建設された歴史ある教会ですが、3度の大地震にあい次第に規模が縮小していきました。
とはいえキトを解放したアントニオ・ホセ・デ・スクレの棺も収められており、エクアドル国民にとっては重要な教会です。
ガラパゴス諸島と同じく、1978年に最初に登録された世界遺産12ヶ所に入っているキトの市街。
保存状態の良好さが高く評価されている歴史地区は、とっても見ごたえがあります。赤道を跨げる経験も貴重です。
赤道直下とはいえ、高地であるため気温は10~15℃程度。アウターを忘れずに。
いよいよガラパゴス諸島へ【3日目】
キトから飛行機に2時間と少し乗り、いよいよガラパゴス諸島のバルトラ島に上陸。
小さなバルトラ島には、空港と港があるだけ。ガラパゴス諸島観光の玄関口のような役割を担っています。
空港から一歩外へ出る時には靴を軽く消毒液に浸して靴底の消毒を。(サンダルを履かない方がいいかも)
バルトラ島から小舟に乗ってすぐ隣にある、ガラパゴス諸島のメインアイランド・サンタクルス島へ。
ここからサンタクルス島行きの船に乗ります。
サンタクルス島のプエルト・アヨラはガラパゴス最大の街で、多くのホテルやレストランが集まっています。
そのため観光客はほぼ、この界隈に宿泊することになります。
ゾウガメにご対面!ハイランド観光
空港のあるバルトラ島からフェリーでイタバカ海峡を渡った後、車に乗り換えて約30分。
ホテルのあるプエルト・アヨラの街に行く前に、内陸部のハイランドに立ち寄ります。
ここでは、農場にやってくる野生のゾウガメを間近で自由に観察することができます。
雨でぬかるんでいる時は、長靴を無料で借りることもできますよ。間近で見るゾウガメは大迫力!
めちゃくちゃ大きい!
ゾウガメは体長1m以上、大きいものは400kgに達することもあります。
農場の隣には溶岩でできたトンネルが
トンネル内の空気はひんやりとしています。
研究の結果、ガラパゴス諸島は火山活動によって形成された海洋島(大陸と陸続きになったことがない島)だということがわかっています。
そのため、このような溶岩でできたトンネルは各地に存在するのです。
そんな溶岩トンネルをマイナスイオンを浴びながら15分ほど散歩。気持ちのいい時間です。
その後プエルト・アヨラの街にある「チャールズ・ダーウィン研究所」へ向かいましょう。
チャールズ・ダーウィン研究所
ダーウィンさんの威風堂々たる……ちょっと扱い雑??
ここはイギリスの生物学者チャールズ・ダーウィンが、「種の起源」を執筆するにあたって調査を行った場所で、
ガラパゴス諸島の陸上や海の生物と生態系調査、島の自然保護など、様々な活動が行われています。
無料で見学できる園内では、ガラパゴスの島それぞれの、ゾウガメ、イグアナなどが大切に飼育されています。
上段真ん中と下段真ん中では明らかに甲羅の形が違う
13の島でそれぞれ進化したゾウガメはなんと15種類。島によって甲羅の形が違うんです。
ざっくりと分けると主にドーム型と鞍型の2種類。どのように違いが生まれたのかは諸説ありますが、
一説には、でこぼこ道を歩いていてひっくり返ったときに元に戻る際の動き方によるとも言われています。
こちらは、有名な「ロンサム・ジョージ(独りぼっちのジョージ)」のはく製。ピンタ島のゾウガメとしては最後の一匹でした。
ジョージは残念ながら2012年に亡くなり、ピンタ島のゾウガメは、絶滅してしまいました。しかし研究所でジョージのはく製が大切に展示されており、これは一見の価値ありです!
3日目はここで終了。街に戻って各自夕食をとります。
船に乗ってデイクルーズへ【4日目】
この日とその翌日は、ガラパゴス諸島の中の島をクルーズで巡って、上陸観察をします。
このような小回りの利くサイズのクルーズ船で巡ります。
ここから乗り込み船内では裸足で過ごします。
まず向かったのはノースセイモア島
ノースセイモア島まではクルーズ船で1時間半から2時間。
数ある島の中でも最も手軽に多くの鳥類、爬虫類などを観察することができるため人気があります。
ノースセイモア島は東西約2Kmの平坦な島で、アオアシカツオドリや、グンカンドリの営巣地の中にトレイルがあります。
トレイルをガイドさんの説明を聞きならがら歩き、じっくりと観察。もちろんトレイルからはずれてはいけません。
鮮やかな青い足が特徴
真っ青な足のアオアシカツオドリはキレイなブルーの足が本当にきれい。メスの方が濃い青色とのこと。
地上ではペンギンのようにヨチヨチと歩く姿がかわいいのですが、魚を採るために海にダイブする際は急に俊敏になり非常に迫力があります。
6~7月には求愛行動やひなの姿が見れるそう。
アオアシカツオドリを観察した後は、少し先のパロサントの木へ。
木にはグンカンドリが集まっています。赤い喉袋を持つオスのアメリカグンカンドリは、喉袋に空気を入れ膨らませ、のけぞりながら奇声をあげ、上空にいるメスにアピールします。
他にオオグンカンドリも見ることができ、両方見られる場所は少なく非常に貴重だそうです。
他にも、バルトラ島から研究用に持ち込まれたリクイグアナや、陸で休んでいるアシカ、オットセイを見ることができます。
ウチワサボテンの下には、実や葉が落ちてくるのをじーっと待っているリクイグアナたち。トゲトゲはウミイグアナより小さくてとってもかわいいです!
かわいいかどうかは疑問ですが、黄色い身体にまるまると太ったその姿、そしてつぶらな瞳。
じっと見ているとなんとも親近感がわいてくるのは確か。
他にもガラパゴスフィンチやアカメカモメ、ペリカンなどたくさんの珍しい野鳥や野生動物を観察することができます。
午後は再度クルーズでサンタクルス島へ
船上での食事も楽しく、おいしい。左はシェフ。
船上で昼食をとりつつ、バチャスビーチに上陸します。ここでは環境保護のため、海の中でボートから降り、
そのまま歩く”ウェットランディング”で上陸します。足がぬれてもいいように短パンにゴムサンダルのような格好がおすすめです。
島の北部沿岸にある白砂のビーチはウミガメの産卵ポイント。ウミガメが這った跡を見つけることもできるかも!?
ビーチにはガラパゴスの赤いカニ、サリーライトフットクラブなど小動物や、それらを狙う海鳥なども多く見られますし、希望者はここでシュノーケルをすることもできます。
船から直接海に飛び込みシュノーケリング!(沖から海に入る場合もあります)
たくさんのアシカたちと、タッチできる距離で一緒に泳ぎ、私もアシカになったような経験に心から感動しました。
フィンを甘噛みしてきて、何ともかわいい事!忘れられないワンシーンです。
その後はサンタクルスの港まで行き、ホテルへ。プエルト・アヨラの街で各自夕食をとります。
町の真ん中にある魚市場には、アシカやペリカンが、おこぼれを頂こうと集まってきます。
道にはウミイグアナの親子がのそのそ歩いていたり、まさにガラパゴスならでは!お土産物屋さんを見るのも楽しみの一つ。
デイクルーズから戻ったら、ゆっくり歩いてみてください!
アシカやペリカンが魚市場に来てしまうってすごくシュールな光景ですね。市街地でも侮れないガラパゴスの奥深さ!
今日も船に乗ってデイクルーズへ【5日目】
本日はクルーズで、サンタクルス島の東にあるサウスプラザ島へ向かいます。リクイグアナが非常に多い島ですが、他にウミイグアナ、アシカ、鳥類も見られます。
驚きの進化を遂げたウミイグアナ
リクイグアナが特に多いのが、ここ、サウスプラザ島。
このようなウチワサボテンの下では、落ちてくるサボテンの実を狙ったリクイグアナを多数見ることができます。
しかし、ここには驚きの進化を遂げたウミイグアナもいます。
ハイブリットイグアナの可能性もあると言われるウミイグアナ
黄色く太っていてちょっとかわいらしかった(?)リクイグアナに比べると、ゴジラのようにいかついウミイグアナ。
このウミイグアナは世界で唯一泳ぐことができるイグアナで、水中の海藻を食べるために、驚きの進化を遂げたのです。
鋭い爪を持っているため、リクイグアナのように落ちてくる実を待つ必要はなく、自らサボテンに登って実を食べることもできます。
また、1980年代にはエルニーニョ現象で餌となる海藻を失ったウミイグアナが陸に上がってリクイグアナと交配し、
両方の特徴を持ったハイブリットイグアナもこの島で誕生しました。
サウスプラザ島では他に、アカメカモメ、アカハシネッタイチョウ、 サボテンフィンチ、ガラパゴスアシカ、ガラパゴスバトなども見ることができます。
上陸地点にはアシカのハーレムがあることも。集団でいる場合は近付きすぎないように。
午後はシュノーケルを満喫
午前のクルーズが終わると楽しみの船内ランチ。
食後、プンタカリオンにてシュノーケリングを楽しみます。
ノースセイモア島ではアシカと一緒に泳ぐという貴重な体験ができましたが、こちらは海の魚たちメインでした。きれいでかわいかったですよ。
その後サンタクルス島へ戻りホテルへ。
いよいよガラパゴス諸島とお別れ【6日目】
朝、バルトラ島の空港からエクアドルの首都・キトへ向かいます。ガラパゴス諸島とはここでお別れ。
出発まで市内でショッピングやお夕食を召し上がって頂き、夜にはフライトです。
アメリカ国内で乗り継ぎ、日付変更線を通過し、8日目の午後には成田に到着。
最後に
生き物の進化を感じられる内容の濃いツアーでした。
甲羅の形を進化させながら餌をとり生き延びてきたゾウガメでしたが、19世紀には海賊や捕鯨船の乗組員により乱獲され、
一時は3000頭まで減ってしまいました。しかし、1970年代から保護や繁殖活動の成果により現在は約2万頭が生息しています。
ゾウガメだけでなく多くの希少動物を観察できるのがガラパゴス諸島。動物、植物を守るため、人間が入れない場所や、入るのに消毒が必要な場所もあります。
1990年代以降の急速な観光地化と人口増加に伴う環境汚染、外来種の侵入などで2007年に危機遺産リストに登録されてしまったガラパゴス諸島。
その後、エクアドル政府の保護・保存努力が評価されて、危機遺産リストから削除されました。かつて敵だった人間ですが、
今は共存できるよう、絶滅の危機にある動物たちを守っているのです。
「ガラパゴス」というと、「ガラパゴス化」や「ガラパゴス携帯」など、”島国ゆえ、
他国との互換性を無視して進化した”という日本市場のネガティブなイメージの言葉として利用されることがあります。
でもここは「大陸から離れた小島だからこそ、交わらずに進化した動物たち」の楽園。
ここでしか見れない、独自の進化を遂げた動物たちは地球の歴史を思い知らせてくれます。
ガイド付きのツアーに参加して、じっくりと説明を聞くことで、より深くガラパゴス諸島を知ることが出来ますので、一生に一度、ぜひ体験してみてください。
ガラパゴスへ足を運んだ狩野がお届けしました。
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