特派員記事 2009.06.19

「バイコリ」とはヴェネツィアを代表する焼き菓子です。happy01
見た目は大変に地味で素朴なもので、洗練されているとはお世辞にもいえないものですが(イタリアの菓子はほとんどがそうであるように)、1700年代から食べられていたとされる歴史のあるもの。長い長い間、ヴェネツィアの人々に親しまれているお菓子です。

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形状は薄いビスコット(複数だとビスコッティ)、もしくはガレットとでもいいましょうか。

memoちなみに 「ビスコット」の本来の意味は、「ビス=2回」+「コット=焼く」という意味からくるものなので、本来は、2度焼きしたもののみを呼ぶのですが、現在では焼き菓子全体をビスコット(ビスケット)と呼びますよね。

この法則にあてはめると、「バイコリ」は正真正銘のビスコットです。
よく知られているところで、トスカーナの「カントゥッチ」も製法上は同様に「ビスコット」の域ですが、バイコリはトスカーナのそれよりも生地が密でキメの細かい仕上がりとなっています。notes


バイコリの基本的な製法は、まず酵母に砂糖、塩、粉を加えて混ぜて捏ねて固い生地をつくります。これはそれ自体が本生地の生酵母となります。
この生地を発酵させ、大きく膨らんだところにバターを加えてさらに捏ね(ここでオレンジなどの香りを加える)、バケットよりも太めの長い棒状にまとめます。そして再度発酵させます。

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発酵した生地は150℃のオーブンで約10分、その後220℃のオーブンで焼きあげます。そして粗熱をとった後、2~3mmに薄く切り分け、切り口を上にして並べ、50~70℃の低温のオーブンで薄い焼き色をつけるように焼き上げてできあがります。

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発酵2回、焼き2回、と手間と時間のかかる製法
です。

しかし、この手間のかかる製法のおかげで非常に日持ちのする保存性の高いものが出来上がります。その昔、海を渡って商売に出かけたヴェネツィア商人の乗る船の食料倉庫には欠かせないもののひとつとして常にリストに挙げられていました。coldsweats02

また、その当時の貴族たち、そして外国からの客人などが集まる社交の場でも振舞われていたとされています。

一説によると、これはその昔は菓子としてではなく、保存性の良いパンとして扱われていたとか。古いリチェッタを見ると、「パン・デ・サルーテ」というパンがあり、作り方はこのバイコリとほぼ同様。

バイコリが現在のように商品化、定着化したのは、アンジェロ・コルッシAngelo Colussiというヴェネツィア人によるものとされています。

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このメーカーの化粧箱は、バイコリを象徴するようなもので、バイコリというとこの箱を思い出すほど、現在では一般的なもので普及率も高いです。

ヴェネツィアの町を歩いていると、あっちでもこっちでもこの黄色と青色の箱を見かけることになります。

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バイコリはそのまま食べてももちろん良いのですが、よく知られているところでは、カフェのお供に、そしてザバイオーネ(卵黄と砂糖をかきたててマルサラで風味をつけた生暖かい泡状のドルチェ)のお供として好まれます。

そして、このバイコリという名前も少し変わった響きに感じますが、これもヴェネツィアならでは。
この平べったい形が小さなボラ(魚の)に似ていたことから、ヴェネツィアの方言であるバイコリと呼ぶようになったとか。

happy01一見すると物静かで地味な存在ですが、内に秘めるストーリーは、なかなか興味をそそられるものです。




記事&写真提供:特派員白浜さん

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