特派員記事 2010.11.11

スペイン生まれのアーティスト、マリアノ・フォルトゥニーMariano Fortuny(1871-1949)が1889年以降ヴェネツィアに移り住み、そして最期を過ごした住居となった建物を利用した博物館です。

もともとはヴェネツィアで富を成した商人のなかでも特に有力なペーザロ家の住居だったものを彼が買い取ったものです。

H.I.S.イタリア支店 ♪カプチーノ天国♪-MUSEO_FORTUNY_03


マリアノ・フォルトゥニーはもともと芸術家の家系に生まれた人であり、その血筋から様々な分野にてその才を発揮していたといわれています。
彼の肩書きは、画家、スタイリスト、デザイナー、舞台美術家(装飾家)などとされ、晩年は数々の舞台美術も手がけていました。美術・芸術の分野において、自ら持ち合わせた磨かれたセンスをもとに、ロンドン、パリ、ミラノ、ローマ、ヴェネツィアなどで活躍をした人物です。notes

同建物は1956年に未亡人となった彼の妻ヘンリエッテHenrietteによって、ヴェネツィア市に寄贈されたもの。
彼の手がけた作品やコレクションなどが保蔵されています。

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また、これら元来の彼の展示物の他、季節ごとに様々なアーティストの作品を展示する展覧会・イベント会場ともなっています。notes

この時期の催しは「autunno a Palazzo Fortuny(フォルトゥニー邸の秋)」と題した8名のアーティストの作品展覧会となっています。

1 階(primo terra)
ヌアラ・グッドマンNuala Goodman/ガーデンGarden展
…画家、モード・デザイナー、現代インテリア・デザイナーとして活躍するアイルランド生まれ(1962)のアーティスト。ソファやカーペット、洋服などを空間ごとに赤や黄など色のベースごとに分けた展示。独特のデザインと鮮やかな色のなか、実際にソファに座ったりもできます。


2 階(primo piano)
マリアノ・フォルトゥニーMariano Fortuny/ラ・セータ・エ・イル・ヴェッルート(絹とビロード)La Seta e il velluto展
…後述参照

アルベルト・ゾルズィAlberto Zorzi/ウニクム(ユニーク)Unicum-ジュエッリ・エ・アルジェンティ(銀装飾品)Gioielli e Argenti-展
…パドヴァ生まれ(1958)のジュエリーデザイナー。銀をベースとしながら非常に繊細かつ現代風なデザインのアクセサリーが展示されています。大ぶりなデザインも、見ているとまるで素材が紙であるかのような独特の風合いに仕上げられた作品たちです。

ジョルジョ・モランディGiorgio Morandi/スィレンツィ(静粛)Silenzi展
…ボローニャの画家(1890-1964)の作品展。『静寂』というタイトル通り“静”を意識したとされる静物画の数々。


2-3中間階(primo e secondo piano)
マルコ・ティレッリMarco Tirelli展
…ローマ出身(1956)の画家。モノトーンに統一された抽象画が並びます。大きなキャンバスの中に光と影が見える、モノトーンなのに遠近感のある画風は、見ているうちに思わず惹き込まれてしまう魅力的な作品です。


3階(terzo piano)
ジョルジョ・ヴィーニャGiorgio Vigna/アルトレ・ナトゥーレ(他の自然)Altre nature展
…ヴェローナ出身(1955)のアーティスト。“Wabi-Sabi(侘・寂)”をテーマとしたガラスアートの展示です。ひと区画内に小さな和室に見立てたコマをいくつか作りだし、床の間のように見える展示棚に作品が置かれています。丸みを帯びた繊細なガラスがアート的に並べらていたり、と和洋の見事なコントラストの小気味良い展示です。

ルーカ・カンピゴットLuca Campigotto/マイ・ワイルド・プレイスMy Wild Place展
…ヴェネツィアの冒険写真家(1962)の写真展。海や山、砂漠などの大自然を彼の視線で美しく鋭く捉えた迫力ある写真が並んでいます。


そして、個人的に興味深いのは、やはり同館名を冠しているマリアーノ・フォルトゥニーの『絹とビロード展』
薄暗い大きな部屋の壁いっぱいに吊り下げられている美しいビロードの布地。
さらに彼の手がけた絵画及び美術コレクションが並んでいます。
そのなかで目をひくのが、彼自身のデザインした作品である細かいプリーツがたっぷりと入ったドレスや、シックな生地をたっぷりの生地を使ったマントやドレスなどをまとったマネキンたち。

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このプリーツのドレスは『Dolphos』といい、彼の代表的な作品でもあります。同作品を含め、彼の作品名にはギリシャ語がつけられていますが、これもデザインの由来が古代ギリシャ人の服装をイメージしたものからだとされています。
そして、なによりも注目なのは、上述のドレス使用の生地ももちろん含まれる独特の生地。
彼の技術によるところのビロードです。coldsweats02
ヨーロッパであり、しかもオリエンタルな文化の強いヴェネツィアならではのデザインだと思わせるシックなモチーフ。これらはその昔、ヴェネツィアの重要な産業のひとつであったともされる絹の手間と費用のかかる手織り作業を量産できるプリント加工にした、という功績があります。
(もちろん、彼の作品のオリジナルも相当なお値段であることは言うまでもありませんが。。。)
つまりはテキスタイルデザイナーとしての先がけ的存在。
大変に美しい価値ある作品の展示なのです。

とは言うものの、この部屋は彼の作品とコレクションがごちゃ混ぜになった独特な雰囲気のする空間。
その薄暗さも相まって、部屋に入った瞬間はこの部屋の空気に慣れるまでに時間を要する(?)感あり。
ただし、それらの美しい生地とそれらでデザインされた洋服をじっくりと見ていると、魅了されること間違いありません。good
部屋に吊り下げられた数々の大きなシャンデリアも、この生地を利用してデザインされたものです。
地味ながらに興味深い展示物です。

建物の外壁は現在修復中で残念ながら外観の景観的には美しくはないのですが、中庭のレトロな雰囲気。
会期は2011年1月9日までです。

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ちなみに、本物を手に入れることは困難ですが、
彼の仕事をモチーフとした生地を利用した小物を扱う土産物屋さんもあります。

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ヴェネツィア内に4店舗展開中の同店、同展覧会を見学後に立ち寄るとその価値もひとしおです。
ポーチやスカーフから照明器具まで揃います。店員さんも非常に良心的です。
こちら↓
『VENETIA STVDIVM』
San Marco 2425, Venezia
www.venetiastudium.com


Autunno a Palazzo Fortuny
San Marco 3780, Campo San Beneto, Venezia
Tel. 041 5200995
http://www.museiciviciveneziani.it/frame.asp?pid=1852&musid=2&sezione=musei

※写真の一部(展示物)は同上のサイトからの転用です。


記事&写真提供:特派員 白浜亜紀 こちらもチェック

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