ヴェネツィアの船舶歴史博物館(ムゼーオ・ストーリコ・ナヴァーレ)は、イタリア海軍所有の船舶博物館です。
かつてのヴェネツィア共和国は、海洋貿易で繁栄した国であり、おのずと同国の繁栄を支えてきたのも、数々の海戦とそれに伴う造船技術の向上の歴史。
ヴェネツィア本島の東側には、アルセナーレというその当時の造船場跡地がありますが、同博物館もそれに隣接した場所、サンマルコ湾に面して建っています。
館内は1階から5階まで、各階それぞれに、時代や内容によって展示分けされています。
そのうちの必見のものは、やはりセレニッシマ(晴朗きわまる処)と称されたヴェネツィア共和国時代の代表的な護衛船である、ガレー船でしょう。
ガレー船とは、大型の軍艦で多くの人力を必要とする、つまり多数の櫂を使用し、それに対応して漕ぎ手を多く配備した船のことをさします。
複雑に入り組んだ地形と風向きの不安定な地中海で主に多く使用されていた船で、ヴェネツィアでは特に中世から18世紀を中心として非常に盛んに造船されていました。
16世紀にギリシャの湾沖でヴェネツィア・教皇・スペインの連合軍と、現在のトルコを中心としたオスマン帝国との間に繰り広げられたレパントの海戦で活躍した船舶が同型船の頂点と言われ、館内にはその当時の資料や船の模型などが展示されており、当時の計り知れない造船術の質の高さに驚かされます。
これは16世紀のトリレーミ・ヴェネツィアーナといい、櫂(レーミ)が3本に連なる大変に精巧なガレー船の模型です。
船の長さは42m、幅は5m、ブナの木でできた櫂は3本が連なっていますが、各々の櫂の長さは11-12m、重さは56-80kgにも及ぶものです。合計約150名の漕ぎ手が必要としました。
多くのヨーロッパの国では、この漕ぎ手に奴隷などをあてていましたが、ヴェネツィアにかぎっては、漕ぎ手はひとつの職業とみなされ、さらに漕ぎ手各人が交易活動を認められていました。
また海戦となるとヴェネツィア国民としての誇りをもって戦いにも挑んだ、という海戦国特有の意味を持つものでもありました。
そしてこれが船の外側の部分です。
美しい彫りが施されており、船の形とともに美しさにも気が遣われていたことが伺えます。
さらに大きなガレー船の模型です。
長さ約50.46m、幅12.87m、漕ぎ手343人を含む乗務総員はなんと700人。
16世紀の戦闘船です。
そして、真紅のロッソ・ヴェネツィアーナという、ヴェネツィアを象徴する黄金色が配された豪華な船は、ドージェ(総督)の御座船。
その他、17-18世紀の海軍の軍服の展示、さらには第1次・2次世界大戦時の戦闘船までにも至る船の模型の展示や16世紀に使われた日本海軍の模型などの展示も。
↓
ヴェネツィア島内に数ある美術館、博物館のなかでも比較的マイナースポットともいえる場所ではありますが、ヴェネツィアらしいヴェネツィアの歴史に触れる展示物は大変興味深いものです。
Museo Storico Navale
Castello 2148, Venezia
Tel 041.2441399
開館時間 月-金曜 8.45-13.30 土曜 8.45-13.00 日曜・祝日閉館
入場料 1.55ユーロ
記事&写真提供:特派員 白浜亜紀 こちらもチェック