ヴェネツィアの象徴ともいえる建造物であるリアルト橋。
その景観も、また橋の上から見るカナルグランデの眺望も、
まさしくヴェネツィアらしい場所のひとつでもあります。
現在見られるような姿での完成は1591年とされています
そのリアルト橋がこの春から大修復工事に入りました。
修復費用は5百万ユーロとされ、2012年末に
その修復に関わるスポンサー企業公募が始まりましたが、
衣料ブランドのDisel(ディーゼル)が唯一名乗りをあげ、
今年初めに公式スポンサーとして決定、
ヴェネツィア市と契約を結ぶこととなり、
3月より工事に関わる作業がスタートしています
工事に伴い、リアルト橋にも柵などがはられ、美しい景観の一部が今後あちらこちらが隠されることになるとも思いますが、貴重な歴史的建造物を保護するに必須の作業ですので、致し方ありません。
工事は始まったばかり。
現在は作業を進めるにあたる調査段階ではありますが、
完工は約3年間を目標としているようです。
さて、リアルト橋といえば、
見失いがちながら見るべき大理石彫像が…
リアルト橋にはいくつかの彫像が刻み込まれていますが、
これもそのうちのひとつであったものです。
それが、“リアルト橋のゴッボ”です。
1541年、彫刻家のピエトロ・グラツィオーリ・ダ・サロPietro Grazioli da Salòによるもの。
ゴッボの横にある斑岩の柱は1200年代後半のものともされています。
ゴッボと呼ばれるのは、
ゴッボgobbo(=背中の曲った人)ということから由来しますが、
大きな箱状の石を頭部で支えるような形で腰や膝を折り曲げて
苦しそうにしているこの姿を見ればお解りいただけるでしょう。
この時代に造られた彫像は
ヴェネツィア島内でも比較的数多く見られるものでもあり、
ゴッボの像に関しては、当時の政治批判に民衆が起こす抗議のひとつとして皮肉的・風刺的なビラなどを同像に貼りつけた政治的風刺の象徴でもありました。
また、中世の時代には、
囚人の救い主的な意味を持ってこのゴッボは存在していたともいわれています。
サンマルコ広場からリアルト橋までを見せしめのために裸で歩かされ、侮辱や笞刑によって疲れ果てた囚人のゴール地点として、救世主に会うかのようにこの像にすがりついたとも。
彼らの歩く階段を支えるため、彼らの犯した罪までをも支えるべく、
その重荷に耐えかねるかのように苦渋の表情をしているようにも思えます。
いずれにしても、多くの人々の苦渋を背に負う、
悲痛な表情とその姿を現在でも見ることができます。
リアルト橋にあったものは現在保存のために
リアルト橋の袂にあるサン・ジャコモ教会前の広場に面した一角に
ひっそりと置かれています。
記事&写真提供:特派員 白浜亜紀 こちらもチェック