さかのぼって5月25日(日)、アルベロベッロでは、聖体の祝日に伴う儀式がありました。
カトリック教では、ミサの中でホスチア(伊語Ostia:オスティア/パンの象徴で、小麦粉を材料としたオブラート状のもの)と赤ワインを、キリストの聖体と聖血に変化させるための儀式を行います。
儀式の後、聖体が宿したホスチアを信者達が拝領する事で、信者の体内にもキリストが宿るのだそうです。
この儀式は、通常、教会内で行われるのですが、年に一度、聖体の祝日に限り、アルベロベッロでは屋外で行われます。
アルベロベッロの宗教関連の祭りの際の恒例ともいえる信者の行列の中ほどに、いつもは見られない大きな天蓋が登場します。4人の人に四角を支えられた天蓋の下には、更に小さな丸い傘を差し掛けられ、うやうやしく両手でホスチアの入った入れ物を掲げた司教が、ゆっくりと祈りを捧げながら歩を進めます。
そして、途中、町の中に特設された祭壇に向かい、いつもの儀式を行います。例年、祭壇はマルテロッタ通り作られるのですが、今年はあちこちが修復中で、祭壇を設けられる適所が見つからず、別の場所に作られました。
行列の中には、初めてキリストの聖体の拝領を許された子供達の集団もいて、白服に身を包み、神妙に、と言うよりは楽しそうに列に続いていました。
そもそもこの儀式が年に一度屋外で行われるようにのにはなったのには訳があります。事の起こりは13世紀半ば、1263年の「奇跡」に遡ります。
あるところに、ホスチアと赤ワインがキリストの聖体と聖血に変化するという儀式に疑問を抱き悩んでいる司教が居ました。この司教が、とある町で祭壇に向かいミサを行っている途中で不思議な事がおきました。例の儀式の最中、キリストの聖体に変化したホスチアから血が流れ出したのです。
ミサの参列者も司教も、あまりの出来事に驚きました。
この事は、直ちに時の法王、ウルバーノ4世に伝えられ、法王は、血に濡れた司教の祭服などを自身の元に届けるよう指示しました。指示に従い司教たちは法王の下へ向かいましたが、その途中、司教達の行列を見た町の人達は、道に花びらを撒いて「キリストの聖体」に敬意を表しました。この翌年1264年、法王は聖体の祝日を制定し、この日だけ聖体の儀式を屋外で行う事が認められました。
イタリアの各地で、この時期行われる花祭り(infiorata:インフィオラータ)、実はこれも、この出来事が発端となっているのです。キリストの聖体に敬意を表すため花びらを撒いた事に倣って、聖体の祝日には聖体が通る道筋に花びらを撒く事が各地で習慣となり、これが今日の花祭りの起こりとなったのです。
特にローマ近郊のGenzano(ジェンツァーノ)の花祭りは有名で、年々豪華に色鮮やかに、そして花びらの絨毯は年々長くなっているとか。
私も是非一度、この花祭りを観てみたいと思っています。
さて、アルベロベッロでは残念ながら花の絨毯はありませんが、前述の通り、キリストの聖体を祝う信者の行列は、伝統的に続いています。
記事&写真提供:特派員野口さん