ヴェネツィアの美味しいものといえばグランセオラとモエカ。
これら2つとも、ヴェネツィアで食べられる代表的な素材、カニです。
グランセオラとはクモ蟹、モエカはグランセオラとは対照的に小さな小さなカニのこと。
まずはグランセオラ。
この蟹を丸ごと蒸して(茹でて)、甲羅をあけ、中身を足の先まで丁寧にかきだします。
一つ一つ丁寧に手作業です!
ほぐした身をを甲羅に入れ、赤オレンジ色の粒々の卵はその上に散らされ、レモンとオリーブオイルをかけていただきます。
カニの身は甘くデリケート、風味が高くて大変美味。
アンティパストとはいうものの、セコンドとしてもいいくらいなものです。
美味しさは新鮮なうちに蒸してしまうことのようです。
北海道の茹でガニのようでもありますが、やはりここはヴェネツィア、少々趣が異なります。おまけにほぐし身の状態で運ばれてきますので、カニの身を掻きだすのに夢中になって沈黙のテーブルとなる心配もありません。
ヴェネツィアの伝統料理を置くレストランに行くと、かなりの頻度で目にすることができます。
ただし、高級料理の範疇なので、オステリアやトラットリアではあまり見かけないかもしれません。
とはいうものの、最近では、このグランセオラ、ほとんどがスペインからの輸入ものだとか。昔はアドリア海で獲れたのだそうですが、数はめっきりと減っているのが現実のようです。形も少々異なるようで、本来のものは爪の部分がもう少し細長く、身肉の甘味は強かったとは知り合いのレストランのクオーキ(料理人)談。
そしてもう一方のモエカ(複数形は「モエケ」)。これは脱皮したての殻が柔らかい小さなカニ。こちらは4・5月初旬までの季節限定ものです。イタリア語の辞書をめくっても載っていない、正真正銘のヴェネツィアもの。
食べ方は、殻ごと油で揚げたところをいただきます。
揚げたてのアッツアツに塩をふり、レモンをキュッと絞れば最高の旬の味!
ただ揚げる、というわけではない注目すべき調理の秘密は・・・。
新鮮なまだ生きているこれらのモエケをよく溶いた卵液の中に浸します。こうして小さなカニさん達は卵液をたっぷりと吸ってお腹がいっぱい・・・のところに粉をまぶし、たっぷりの油の中に投入され・・・。
そしてテーブルに運ばれます。
モエケの立場になるとなんとも気の毒ですが、こうして殻がパリッとした誠に美味な一品となるのです。
今春の旬は終わりましたが、秋にも短期間出回ります。
旬ともなると、魚市場では水をはった大きなバケツにモソモソと動く小さなモエケを見ることができます。
旬の短い貴重なものです。
海の幸を丸ごと味わう、ヴェネツィアならではのカニ料理です。
ヴェネトを訪れる機会があったらぜひ、こういった珍しい、また特徴のある食べ物を試してみてください。
記事&写真提供:特派員白浜さん