ヴェネツィアの9月第一日曜日は、レガータ・ストーリカの日です。
今年2008年は9月7日に行われました。
レガータ・ストーリカとは、運河のヴェネツィアの町には欠かせない船を使ったレースのことをいいます。
起源は1489年、キプロスの王に嫁いだヴェネツィアの名門貴族のカテリーナ・コルナーロのためのパレードだったもの。
現在はボートレースですが、このレースの前にゆったりとカナル・グランデ(大運河)をゆく、中世の衣装を身にまとった人々の乗る豪華な船のパレードも観光客に人気のイベントとなっています。
「レガータ(regata)」の語源には諸説があり、どれも確信がないものですが、リーガ(riga)→リネア(linea:ライン)、アウリガーレ(aurigare)→ガレッジャーレ(gareggiare:競争する)、またはラミジウム(ramigium)→レメッジョremeggio(櫂、オール)などと、ラテン語からの派生からきているもののようです。
レース自体は種目別に4レースに分かれています。
それぞれ、船の形態や人数に違いがあり、女性用レース、若者用のレースなどがあります。
レースの始まるのは夕方の5時。
カナルグランデ約7kmを走り4色の旗を手にしたものが勝者となります。
当日はこれらのパレード及びレースを見るために、早い時間から運河の周りに陣取った見物客で賑わいます。9月の日差しはまだまだ強いものですが、暑ささえも我慢してでも、この一年に一度の美しい行事を自分の眼で見たいと思う人々でいっぱいです。
2008年のレースの皮切りは、まずは14-18歳の若者のレースでした。
船は2人乗りプッパイオ(puppaio)と呼ばれるもので、昔は警備用に使われていた小型船です。
女性のレース用には、2人乗りのマスカレータ(mascareta)と呼ばれるものが使われます。
当時は小型の釣り船として使われ、それがレース用として現在も残っているものです。
マスケラ(仮面)という言葉からその名が連想されますが、仮面をかぶった売春婦が乗った船でもありました。
現在のレガータの参加者は、鍛えられた両腕に日焼けした肉体を持つたくましい女性たちであります。
また、6人乗りのカオルリーナ(caorlina)は16世紀から使われている形で、作業用、運搬用としてのものでした。物資を運んだり、メルカートの野菜の運搬などもこの船が活躍しました。
そしてゴンドリーノ(gondolino)。これはヴェネツィアでよく見られる観光用のゴンドラ(勿論、中世のものは実用のもの)をレース用に改良したもの。1825年より使われています。ゴンドラよりも低軽量で速く走ります。レースの中で最も盛り上がるのもこのレースです。
運河を走る船にも役割により適する形があり、それが現在ももちろん日常の交通手段、運搬手段として使われていますが、このレガータ・ストーリカはこれらの船の大きな晴れ舞台ともいえるものなのかもしれません。
記事写真提供:特派員白浜さん