ヴェネツィア本島から南下約50kmにある町(市)がキオッジャです。
ヴェネツィアはラグーナ(潟)の上に築かれた町。キオッジャはそのラグーナの南端に位置します。
ここはイタリア国内でも屈指の漁港の町。
アドリア海沿岸では最大といわれています。
もちろんヴェネツィア名物の数々の魚介料理はこのキオッジャで水揚げされたものを基本としており、ここを拠点にイタリア北部を中心とした多くの町に新鮮な魚介が運ばれていきます。
現在はヴェベツィア県キオッジャ市ですが、古くは一度は独立コムーネとして栄え、1797年以降にはナポレオンによりヴェネツィア共和国下に治められ、その後オーストリア、フランスに交互に統治されました。
町の造りは運河にかかる橋の形などがヴェネツィアとよく似通ったところがあり、ちょっと質素(?)なヴェネツィアといった趣の町ともいえるでしょう。
ヴェネツィアと違うところは車もバイクも走っていることでしょうか。
町は静かで素朴な雰囲気を醸し出しています。
観光で賑わうヴェネツィアとは対照的な、漁港の町特有のおだやかな雰囲気、そして鼻をつく潮の香りが猟師の町であることを感じさせます。
町は旧市街地であるキオッジャと、夏場は海水浴場として有名なソットマリーナとの2つに分かれており、橋で結ばれています。
地元の人たちの間では、キオッジャの住人を“キオジョッティ”、ソットマリーナの住人は“マリナンティ”と呼び合います。
旧市街の中心を走るメインストリートはコルソ・デル・ポポロ。大きな通りはピアッツァ(広場)としての役割も果たしており、道の両端はテーブルを並べるカフェがずらりと並びます。主な建造物としてはドゥオーモ、サン・ドメニコ教会、サンタンドレア教会など。
漁業が盛んである、ということで、見所のひとつはグラナイオ広場Piazza Granaioにたつ魚のメルカート。
目印は赤い大きなテント。
運河と平行にのびるメルカートが、漁がお休みの日となる月曜日を除く毎朝開かれます。
ここではアドリア海の近海ものの魚介が数多く並びます。
そして、イッティコItticoと呼ばれる業者向けの市場も。
ソットマリーナへ続く橋のたもとにあります。
威勢のいいかけ声、一見すると怖そうな、体格のいい日焼けした男たちが忙しく右往左往します。
市場の終る昼過ぎともなると、脇のカフェや集会所のようなところではカード・ゲームが始まったりもする、漁師たちの日常があります。
キオッジャの町を取り囲む運河は漁に出る小型の船が、そして特にソットマリーナ側の岸壁には、中~大型の船が並びます。
コッツェ(ムール貝)の養殖場なども見ることができ、まさしく漁業で成り立っている町であることがわかります。
近年はキオッジャ特有の野菜(代表的なのはラディッキオ・ディ・キオッジャ)の生産も盛んとなり、産業のひとつの要ともいえます。
そして毎年、7月中旬には、漁師のお祭り(サグラ・デル・ペスカトーレSagra del pascatore)が開かれます。
夕方からは道のあちこちにバンカレッレ(屋台・テント)がたち、魚料理が格安で振舞われます。
特設のステージが設けられ、コンサートなどのイベントなども開催され、活気に溢れます。
ちなみに今年のサグラは7月11~20日でした。
もちろんこのサグラではなくても、町の至るところにはキオッジャで摂れる魚介をメインにしたレストランがたくさんあります。ヴェネツィアよりもお手頃な値段なのも魅力。
お勧めは、ロカンダ(宿)でもある『アッラ・フレスカ』。
飾り気のない店ですが、割安で旨いものが食べられます。
魚介のリゾット(リゾット・アル・ フルッティ・ディ・マーレRisotto al frutti di mare)やムール貝のスープ(ズッパ・ディ・コッツェZuppa di cozze)は迫力があります。
ソットマリーナ側は旧市街よりもさらに静かな普段の生活が垣間見れる猟師町です。
Locanda alla Frasca
Via S.Felice 303
30019 Sottomarina(VE)
Tel;041.401614
ヴェネツィアからのキオッジャへの行き方としてはバポレットとバスを乗り継いで行く方法があります。
サンマルコ広場からリド島まで船で、それからバスで移動、船に乗り、ペッレストリーナ島へ、さらにバスで移動してからキオッジャまで船で、と合計約1時間半の行程でヴェネツィア本島より南側の小さな島を巡ることができます。
その他、陸路としてはバスも運行されています。電車だとロビーゴから乗り継ぐことになります。
ヴェネツィアへの旅に時間の余裕があるようでしたら、違ったヴェネツィアを覗いてみませんか。
記事写真提供:特派員白浜さん