ビエンナーレはヴェネツィアで開かれるアート(美術・建築)の世界展覧会。
2年に1度、という意味を持つこの祭典は、美術部門と建築部門が交互に繰り返され、2010年の今年は第12回の建築展。
世界的にみても、最高峰と言えるであろう規模と価値、権威のあるものです。
毎回テーマをもって開催される展覧会ですが、今年のビエンナーレのテーマは『People meet in architeture』。
会全体の総合ディレクターは史上初、女性ディレクターで、しかもそれが日本人女性建築家、妹島和世女史が起用されています。
今年はそれに加え、展示部門では金獅子賞を石上純也氏、特別記念金獅子賞に故・篠原一男氏が受賞するなどのビッグニュースもあり、日本の建築の分野においては大変に名誉ある記念の年となったのではないでしょうか。
この建築展のメイン会場となるのは、ヴェネツィア共和国時代のアルセナーレ、そしてアルセナーレにほぼ隣接するように位置するヴェネツィア本島最大の公園・通称ジャルディーニです。
アルセナーレ内においては企画展となり、各国の建築家がテーマに沿った作品を展示。
ジャルディーノ内には、各国の常設パビリオンにそれぞれ国ごとの作品が展示されています。
そして、ヴェネツィアの街中のあちこちには、同時に各国の建築家の集まりにより小さな展覧会が開かれています。
これらは、ヴィッラ(邸宅、商館)などを利用し、国ごとに場所を利用しての展示。
メイン会場では見られないような国や団体の、小規模ながらに興味深い作品展示がひっそりとされているのが魅力的。
それらのうち、ほんの一部ですが、ご紹介。
こちらはフランス館。
パリの国立美術専門学校による出展です。
16人の若いアーティストの作品の立体展示は、紙を中心に使用したとても繊細な作品。
別室では、ビデオ上映。
フランス人のセンスの良さが感じられます。
科学博物館の建物の一部が展示場となっています。
Istituto Veneto di Scienza, Lettere ed Arti
Palazzo Loredan, Campo Santo Stefano,2945
「All Shades of Green」と題されたのはスロヴェニアの首都ルビアナにある建築家のストゥーディオ「Studio AKKA&studiobotas」より。
都市における人と自然との調和をテーマにしています。
ふすま扉のように何層にも重ねられたガラスの扉。それぞれが2重構造になっており、その間に細い電線が通り、様々なデザインが描き出されています。
来場者はその仕組みを知るために何度も扉を開けたり閉めたり。。。ガラスについた指紋の跡で見て解ります。
明るい木目の会場と展示物が一体となっていい雰囲気です。別室のまっ白な小部屋には、どこからともなく“夏の音”セミの鳴き声がしてきて、もうすでに寒さを感じるこの季節には、ちょっと懐かしい感覚。
子供が落書きしたような森林の風景の照らされた写真の上に置かれた薄透明の紙には、子供の落書きのような絵が重ねられ、、、これもアート。
可愛らしい、落ち着く空間を提供しています。
Galleria A+A
Centro Pubblico per l’Arte Contemporanea
San Marco, Calle Malipiero 3073
ちょっと変わった展示場はキプロス。
『Walking Movie』というタイトルを連想させるかの如く、入り口から室内まで足跡が続いています。
その足跡に招かれるようにして階段を上り、2階へ。。。
目玉がデザインされているそれらはあっちこっちに群れたり、配置よく足跡をつけたり、、、と愛敬たっぷり。
展示会場内は仕切られた部屋に会議室のような長机が蛇のように配置され、その上部は写真が並べられ、それらが下からライトアップされています。…というとなんとなくいい感じですが、なんだか“間に合わせ”的な空間。もしかして、これも狙いなのかもしれません。
並べられた写真は、建築物とそれを設計した建築家の上半身の写真を貼りつけられたような構造。それらはとてもモダンなものもあり、また昔懐かしい建物もあり。。。ヨーロッパとアジアの文化が融合する場所だからこその妙なのでしょう。ヨーロピアン・オリエンタルな匂いがします。建築家の顔を見ても、どうみてもアラブ系の顔からアジア系、そしてヨーロッパの影響の濃い面影を残した人など、人種も様々。
街並みの背後に巨大キノコがニョキニョキと合成してあったり、なんだかとても不思議な展示です。
Palazzo Malipiero,
San Marco 3198
今回の訪問で個人的に結構気に入ったのは、ルクセンブルグの展示です。
中に足を踏み入れたら、コーヒーカップが。
それも規則正しく多数。
そしてコーヒーの角砂糖が紐に吊るされて宙に浮いているのです。
もちろんそれも規則正しく、高さも正確に。
何を思ってこういう展示をしたのだろう、とそれに興味が沸いてしまいます。
テーマは『Rock-Paper-Scissors』。
意味するところは、現代の疑問・問題を解き放とうというところでしょうか。
このコーヒーは本物なのか?というなんだか情けない発想ばかり湧いてしまって、質問したら、これは本物ではなくて、もしよかったら、こっちでコーヒーでも、と別室へ促されました。
通されたの部屋(もちろん展示会場)は、この企画をした女性建築家たちの仕事部屋を再現したものなのか、ちょっとした散らかり具合が心地よい、素敵な部屋でした。
Ca’ del Duca
Corte del Duca Sforza, San Marco 3052
台湾館は毎回会場とされているのがパラッツォ・デッラ・プリジョーニ。
パラッツォ・ドゥカーレの脇にある牢獄の建物の一部。ヴェネツィアでは一等地に位置します。
『Take a Break』と題された内部は、なんだか、アメリカ映画に出てくる間違った解釈をされた日本の芸者茶屋のような様子。
西洋人が東洋を意識してつくるバーによくありそうな色遣い。
台湾人がこれをやっているのだから、感覚的には彼らはかなり西洋人的なのか、とも考えます。
会場の監視(?)をしている女性もなんだかこの部屋にしっくり合っています。
Palazzo delle Prigioni
Castello4209
建築展となる会場はヴェネツィア本島内に点在しています。
これらの街角展はどこも入場無料ですので、
この時期のヴェネツィア散策で目にしたら、ぜひ立ち寄ってみてください。
記事&写真提供:特派員 白浜亜紀 こちらもチェック
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投稿: ぱおりん -2010年10月28日 (木) 12時45分
■教えてください。
いつまで開催されるのでしょうか?教えてください。 -
投稿: his-rome -2010年10月28日 (木) 13時42分
■Re:教えてください。
>ぱおりんさん11月21日までですね。イタリアにいらっしゃいますか? -
投稿: ぱおりん -2010年10月28日 (木) 15時51分
■残念
お返事ありがとうございます。今年って記載があったので、年内なんだろうな~とは思いましたが、残念です。来年1月8日から1週間ほどイタリアに行きます。この時期ですと、近代アートや家具、建築、ファッション系で何か開催されるイベントありますでしょうか?あ、ミラノではご紹介いただいている美術館、行く予定です。 -
投稿: his-rome -2010年10月28日 (木) 16時11分
■Re:残念
>ぱおりんさんうぅん、残念。12月1月の情報また紹介するようにしますね。 -
投稿: masami -2010年10月29日 (金) 16時46分
■楽しみです!
すてきな情報ありがとうございます。11月9.10日にベネツィアに行く予定があるので、楽しみです。直前まで色々拝見して、ストにも気をつけたいと思います。