ここ最近、ヴェネツィアの見所のひとつであるリアルト橋たもとの魚市場が揺れています。
というのも、にわかに魚市場閉鎖の噂が流れているから。
地元の新聞やインターネット上の情報では、最近同話題が取り上げられるようになり、市場に行っても『リアルトの魚市場、閉鎖の危機』と書かれた紙が至るところに貼られているのを目にします。
事の発端は、ヴェネツィアの港湾当局の岸壁拡張計画のモデル図から。
そこにヴェネツィア本島西側に位置する埋め立て地であるトロンケットもその範囲内にあり、その計画が進むと必然的にトロンケットにある業者向け鮮魚市場(イッティコ)も撤退、陸地へ移転する、ということが予想されます。
そうなるとトロンケットで取引された魚を店先に並べるリアルトの魚業者は輸送コスト、時間的な問題など業務が過負担になることから閉鎖もやむを得ないのでは、というのです。
実際には、これらは憶測にすぎないこととされてはいますが、今後の動きを見守りたいものです。
いずれにしてもリアルトからこの魚市場がなくなるのはとても寂しいものですから。
リアルトの魚市場は、そこに隣接する野菜・果物市場も含め、ヴェネツィア人の台所となるべく、毎朝多くの人が買い物にやってきます。
観光客にとっても、真のヴェネツィアの食を垣間見る絶好のスポットでもあり、ヴェネツィアらしい絵になる場所のひとつであることは言うまでもありません。
カナル・グランデ沿いに建てられた市場の建物は2つあり、1907年建築。
当時ヴェネツィアを中心に活躍したドメニコ・ループロDomenico Rupoloによるものです。
ヴェネツィアでは、既に1173年から政府が魚業者を統括すると制定されていました。
古くからヴェネツィアの食文化には魚は大変に重要であったことがうかがえます。
この魚市場でも、魚を売る棚(白い大理石のテーブル状、現在はステンレスとなっていますが)のそれぞれの業者には決められた幅が与えられており、その数字は建物の前の刻まれた石碑に現在も残っています。
同市場に並ぶ魚介は多種多様な魚、甲殻類、イカやタコ、貝類。ラグーナやアドリア海、そして大西洋岸で漁獲されたものです。
たいていは魚の価格表示に漁獲地が記されていますが、特にヴェネツィアのラグーナで獲れたものには、「地元産の」という意味を持つ「ノストラーニ(ネ)Nostrani(e)」と添えられています。
魚をじっくり見たら少々上にも目を転じると、建物の周囲を囲む円中の上方は、それぞれが異なる海の動物をモチーフにした彫刻が施されているのが見えて興味深いものです。
木造の美しい梁の天井も見どころでしょう。
市場は火曜日から土曜日の7時半ごろから12時半ごろまで開かれます。
営業時間の終わるころには片付け作業がどんどん始まりますので、正午前の訪問がおすすめです。
記事&写真提供:特派員 白浜亜紀 こちらもチェック