ヴェネト州に位置するヴェネツィア。
街角にある八百屋さんやリアルト橋の袂にある市場を覗きながら
町の散策をすると地元の季節の野菜や果物を知ることができます。
この時期、ヴェネトの冬を代表する野菜がこれ、ラディッキオです。
ラディツキオはチコリの変種で、非常に特徴的なのがその色と形。
細長くピンと延びた筆のような形状と、赤紫×白のコントラストを持ちます。
最近では日本でもレストラン向けなどに栽培されてもいるようですが、
ヴェネツィアにいらした際にはぜひとも味わっていただきたい野菜です。
実はラディッキオにも数種あり、
その土地によって特徴が変わることによって産地名が冠されます。
そのなかでも上述した最も特徴的で有名なものが
晩生種(タルディーヴォ種)のトレヴィーゾ産IGP
(IGP=Indicazione Geografica Protetta=生産地呼称)と呼ばれる品種です。
産地呼称とされているのは、
認定されている栽培地域があり、
これはヴェネト州のなかでもトレヴィーゾ県、ヴェネツィア県、パドヴァ県の3県にまたがる特定地域のものです。
そして晩生種があるのですから、もちろん早生種もあります。
これはプレコーチェ種と呼ばれ、収穫期はクリスマス前までのもの。
ちなみに他変種では、薄緑色がベースで赤紫色が斑点模様のように入っているカステルフランコ産(トレヴィーゾ県にある町の名前)。
小さな丸いボール状のキオッジャ産(ヴェネツィアの南側に位置する漁港のある町)。
そしてプレコーチェ種に少し似ているのがヴェローナ産です。
値段も特にタルディーヴォ種が高く表示されるのが通常ですが、
その収穫から出荷までの作業をみるとその理由も納得。
畑から収穫したものは根元をつけたまま箱につめて流水にさらします。
冬の間、時期や気候によってもその期間は変わりますが、
2週間ほどこの過程を経ることにより、
同野菜の特徴である赤紫と白のコントラストができます。
そして、その後、周囲の外葉を取り除き、水で綺麗に洗いようやく出荷。
作業はすべて人の手によるもの。
そして、畑から収穫したものから出荷までの間で捨てなければならない部分は全体の7割。
ほとんどが捨てられてしまう部分で可食部は中心にあるほんの少しの部分。
きれいな大量の水とこの土地の気候と大地、
時間が作りだす自然の力とそこに手間をかける人の手が作り出す貴重な野菜です。
食事処でこれらの野菜はどのようにして使われているのかというと、
代表的なものがリゾット。
パスタの具材としてももちろん大活躍。
ベシャメル(ホワイトソース)と合わせてラザーニャ風や…
ミネストラ(スープ)に使われたりもします。
そしてグリル。
マリネやフリット(揚げもの)に。
生のままでサラダにも使われます。
生でも調理しても使える万能で、またそれぞれの美味しさがあります。
生ではクロッカンテ(シャキッと歯応えがある)な食感と
甘くて少しほろ苦さが楽しめます。
調理してもその存在感はそのまま、野菜の持つ甘さが引き立ちます。
収穫及び出荷は毎年11月から始まり、
その年の気候にもよりますが、3月の終わりから4月初旬まで。
季節ものでこの土地ならではの特産物ですので、
この時期は今年のものの最後のもの。
見かけたらぜひ味わってみてください。
冬にだけ食べられるこの野菜は、
その見た目の美しさからフィオーレ・ディ・インヴェルノfiore d’inverno=冬の花、とも呼ばれています。
記事&写真提供:特派員 白浜亜紀 こちらもチェック