ヴェネツィアの人々が春というと心待ちにする野菜、
それがカストラウーレです。
それは、いわゆる小さなカルチョッフィ(アーティチョーク)のことを指します。ヴェネツィアのサンテラズモという小さな農業の島で栽培されているもので、春先になるとヴェネツィアを中心にしたごく一部の地域で出回ります。
それを見ることで春を感じる風物詩でもあります。
このカストラウーレはカルチョッフィの蕾が大きく成長する前に収穫するもの。小さくて柔らかく、デリケートでフレッシュな独特の香りが特徴です
収穫が成長する前、というだけあり、その名の語源はイタリア語のカストラート(=去勢した)に由来することも、地元ではよく知られたものです。
そして、栽培地として有名なサンテラズモ島では、毎年5月半ば(第2または第3日曜日)の旬を迎えるこの時期にサグラと呼ばれる収穫祭が開催されます
今年のサグラは5月12日。ヴェネツィア本島の北側、フォンダメンテ・ノーヴェからヴァポレット(乗合船)に乗り、約30分ほどでサンテラズモ島に到着。
本島とはうって変わった、緑豊かなのどかで穏やかな風景が広がる農業の島です。この日はこのヴァポレットもこのサグラを訪れる人々で満員状態。船着場を降りると、ただただ畑の中の一本道を人の流れに沿ってひたすら歩きます。
畑の中…とはいえ、ここはヴェネツィアのラグーナに浮かぶ島。あちらこちらに水の流れがあり、改めて浅潟に浮く島であることを感じます。
とはいえ、道の両脇にはぶどうの畑や各種野菜畑、農家である造りの家が点々としていて、非常に不思議な雰囲気。
ここでは、皆がお目当てのカストラウーレの直売所、他季節の野菜の販売所、はちみつ、瓶詰めもの、ワインなどが売られています。どれもこれも地元産。
そして、お昼どきには長~い列をなした仮設レストラン。この小カルチョフィを中心とした料理が振舞われています。食堂は青空の下にて。
私はあまりの長蛇に少々恐れをなし、その先の海を目の前にした小さなレストランにて食事。もちろんここでも長蛇の列であることはいうまでもないものの…
お目当ての皿は写真一番手前のもの
採れたてのカストラウーレを茹でてオイル漬けにしたものです。びっくりするほど柔らかく、風味豊か。来た甲斐がありました。
ちなみに奥に見える皿は、フリットゥーラ・ミスト(魚介のミックスフライ)とイカスミのスパゲティ。
この日は天気もよく、海岸には早くも日光浴を楽しむ人でいっぱいでした。
収穫祭は毎年1日限りの楽しみで、今年はこれにて終了ですが、来年春先にヴェネツィア行きをご計画の場合には、違ったヴェネツィアの雰囲気を味わいにぜひ足を運んでいただきたいものです。
ただし、地元の人たちでものすごい熱気ですので、昼食をここでされる場合には早めの移動が絶対お勧めです!
Festa del Carciofo Violetto di Sant’Erasmo
Isola di Sant’Erasmo
記事&写真提供:特派員 白浜亜紀 こちらもチェック