<洞窟教会-サンミケーレ・アルカンジェロ教会>
プーリア州の北部、アドリア海にこぶのように突き出たガルガノ半島の南部に位置するモンテ・サンタンジェロは、天然カルストから成る岩山の高みに広がる小さな町。831メートルの標高からは、眼下に広がるアドリア海の眺望を楽しむことが出来るほか、周囲の森には樹齢数世紀の木々が生茂り、雄大な自然を間近に感じることが出来ます。
岩山全体に天然の洞穴や洞窟が多く、特にその自然造形を利用したサンミケーレ・アルカンジェロ教会は、町の歴史と深い関わりを持ち、かつ、カトリック教徒にとっては、聖地の一つと位置づけられるほど神聖な場として、毎日多くの信者達が礼拝に訪れます。
この町は、5世紀の終わりから6世紀初頭にかけて、東洋を横断してきたアルカンジェロ・ミケーレの出現により生まれたという伝説があります。
彼はこの地を、自身の「地上の拠点」として運命づけ、天から舞い降り、その証として、天然洞窟からなるサンミケーレ・アルカンジェロ教会が誕生しました。そこを中心に、住居群が建ち並び、町を形成し、神秘と芸術に溢れる新開地として発展を遂げていきました。
天の使い…サンミケーレ(聖ミケーレ・アルカンジェロ)の最初の出現は、490年5月8日に遡り、続いて492年、493年、最後はペストが大流行した1656年の計4回で、洞窟教会の誕生を含め、彼の出現によって起こった奇跡は、常にこの町を救済し発展へと導いてきました。
その事がきっかけとなり、西洋にサンミケーレ崇拝が広まり、神聖なる山はその流布の中心となりました。
町の名前「モンテ・サンタンジェロ」は、かつてこの場所を、天使の山(monte dell’ Angelo:モンテ・デッランジェロ)、アルカンジェロの町(citta’ dell’ Arcangelo:チッタ・デッラルカンジェロ)と呼んでいた事に由来します。
この教会でまず目に付くのは、敷地内を入ってすぐ右手にある、八角柱の高い鐘楼です。1274年にカステル・デル・モンテの塔をモデルとして、同じ比率で作られたというこの鐘楼は、教会のシンボルであると共に、町のシンボルにもなっています。
教会の正面は、大きな2つのアーチと、それを見守るサンミケーレ・アルカンジェロが特徴的です。サンミケーレ・アルカンジェロは「戦う天使」の象徴とされ、天使の羽を持ち武器を持って戦う姿が描かれています。
右のアーチの突き当たりにある扉を入ると、中はキリストを抱く聖母の肖像を背景に中央祭壇が設けられているごく普通の教会です。
そして、左のアーチの奥に、肝心の洞窟教会へと続く扉があります。扉の奥には長い下り階段があり、そこから先は、写真撮影も禁じられています。
階段を下りきった所に、少し広い空間があり、その左側の扉の中が洞窟教会です。
天井から壁まで、天然洞窟の地肌が剥き出しになった空間の奥に、大祭壇が設けてあります。洞窟の景観を崩さずに作られた祭壇は、シンプルで決して派手さは感じませんが、荘厳なイメージを与えています。
その脇の小さな祭壇の裏側に、大理石で作られた高さ50センチほどの小さなサンミケーレ・アルカンジェロの像が奉られています。
天然岩に囲まれた教会の中は、とても静かで私語も禁じられています。時々ざわついてくると係員が入ってきて「静かにっ!!」と一喝していきます。
この教会は、まさに信者の為の祈りの教会のようです。
記事&写真提供:特派員野口さん
特派員記事
2008.06.27