特派員記事
2008.06.28
一ヶ月遅れのハッピーバースデイ・トゥ・アルベロベッロ。5月27日(火)は、アルベロベッロの町の誕生日でした。
1797年5月27日、ナポリの国王が、アルベロベッロを直轄領地とする法を発令し、それによりアルベロベッロは、悪徳伯爵から解放され、自治権を手に入れました。
そのため正確に言うと、解放記念日と言うことになりますが、アルベロベッロの町の新たな歩みの第一歩は、ここから始まるので、誕生日と言っても間違いではありません。
解放から今年で211年目、歴史の古い町の多いイタリアの中では、ごくごく若い町ですが、この200年は、アルベロベッロの人達にとって、決して楽な歩みではなかったはずです。
独特なトゥルッリの町並のお陰で世界遺産に指定され、今や国内はもとより海外からもちろん日本からも多くの観光客が訪れるこの町ですが、経済発展に乏しかった南イタリアの中にあって、その影響を受けなかった訳がありません。多くの人が、豊かさを求め、北へ、そして海外へと流出して行ったのも、決して遠い昔ではありません。
とんがり屋根の可愛いトゥルッリも、町の人にとっては貧困と束縛の象徴であり、トゥルッリの家を棄て、郊外に普通の家を建てることが、町の人達のささやかな夢だった時代もありました。そんなささやかな夢さえ叶えられない人達は、トゥルッリに残る事を余儀なくされたのです。
多くの人達に手放され、二足三文で売られたトゥルッリも、今日の観光ブームのお陰で、あっという間に高騰し今や高嶺の花。本当に世の中、何が起こるか分らないものです。
さて、アルベロベッロでは誕生日を祝って、小さなイベントが行われました。
町の有志達が、時代衣装を身に着け、当時の様子を演じたのです。
伯爵の横暴ぶりに不満を募らせた農民達が、何とか解決策は無いものかと思いをめぐらせます。
そして、国王に直訴することを思い立ち、その代表として町の4人の司教と3人の有力者が選ばれました。代表者達は、ナポリの国王が訪れる予定のターラントに赴き、王と対面、町の現状を直訴しました。
国王は早速現状を調べさせ、代表者たちの訴えが事実である事を知ると、すぐに、法令を発しました。劇は約1時間、町の有志たちはたっぷりと熱演を見せてくれました。
その後、市長の挨拶があり、直系1メートルはあるかと思われる特大ケーキが運ばれてきました。市長が最初にナイフを入れた後は、
小さく切り分けられ、見物人たちにもお裾分けされました。
記事&写真提供:特派員野口さん