特派員記事 2008.11.15

ビエンナーレとはそもそも「2年に一度」という意味を持ち、ヴェネツィアでは1895年から開催されている美術・建築の展覧会。今年は11回目を迎える建築展が開かれています。

今年のビエンナーレのタイトルは『Out There:Architecture Beyond Building』。ディレクターとして、オランダの血筋をひくアメリカ生まれのAaron Betskyが迎えられています。タイトルを日本語に訳すならば『外へ。建物の向こうにある建築』、意訳とすれば、、、『建築を超えて』といったところでしょうか。
ディレクターBetsly自身の言葉、「建築は建築する(組み立てる)という意味ではない」ということがタイトルのコンセプトともなっているともいえます。

ヴェネツィア共和国時代の国立造船所アルセナーレとそこから歩いてほど近いヴェネツィア市街の最大の公園・ジャルディーニがメイン会場。そのほか、ヴェネツィア本島の各ヴィッラ(商館、邸宅)で展示や催し物などが展開されています。


アルセナーレ入り口 さて、アルセナーレの細長い建物の中は、アート・建築の企画展のような形式になっており、先述したビエンナーレの今年のタイトルを思わせる内容の展示を見ることができます。これも、Betskyの企画する、紙面上の図面や模型、写真の展示ではなく、建築そのものを展示しよう、というものからです。


アルセナーレ内部の展示1 まさしく現代アートといえるであろう作品が、歴史ある造船所の建物いっぱいに展示されているのは圧巻。

アルセナーレ内部の展示2 世界中のアーティストのそれぞれの表現方法が面白いものです。

アルセナーレ内部の展示3 一見、なんだろう??と疑問に思う作品も、そこに隠されているコンセプトを知るとさらに違った視点で見えるのだから不思議です。

ジャルディーニの様子 一方、ジャルディーニ内には参加各国の恒久パビリオンが建っており、各国の建築家の作品をゆっくりと見て回ることができます。もちろんそのうちには日本館もあります。

コミッショナーとして、建築評論家、東北大学准教授である五十嵐太郎氏が関わり、建築家の石神純也氏、植物学者の大場秀彰氏によるコラボレーションという形をとったものです。

日本館は生い茂る(?)木に少し隠されたようにひっそりと佇む地味な建物。confident

会場に入る一角に日本を感じさせるちょっとした空間を設け、建物のまわりには温室を思わせるガラスでできた植物園が設けられています。


日本館内部 会場内に入ると、意外な空間、、、というかただただ白い空間が広がります。白い壁のみ、それ以外は何もなし。
テーマはEXTREME NATURE: Landscape of Ambiguous Spaces

目が覚めるような白い壁一面に、五十嵐氏のイメージする「街」が描かれています。それも大変に繊細なタッチ、鉛筆による手描きのもの。


壁に描かれた絵 彼のイメージは常にこういった繊細な傾向にあるとのことで、これを描写するのには鉛筆が最適な手段となるようです。
このパビリオンを完成するために、スタッフとして日本人の男女がのべ10名ほど、この展覧会が開催される1ヶ月以上も前から準備を進めていたのだといいます。もちろん現地イタリア人の助けもあったそうですが、この独特の繊細さを彼のイメージに近い仕上がりにするためには、日本人ならではの器用な手先が必要だったようで、五十嵐氏本人によるダメ出しも何度か繰り返されていたとのこと。shock

日本館の外に置かれた温室 建物の外に設置されたガラスの植物園は植物学者の大場氏と建築家石上氏との共同作品です。
ガラスの温室の特徴としては、五十嵐氏特有の繊細なタッチをそのまま再現したもの。つまり、高さのある温室に薄いガラスと細い柱、ここでも再現される繊細さ、そして華奢な造り、これが最大の見所で、この高さのあるガラスの建物をこの細い柱を用いることは大変に難しいのだといいます。
内部に植えられている植物は、ガラス内外の微妙な温度差を考えられた植物を大場氏の選定のもとに集められたもの。
本当は日本らしいオリエンタルなイメージのものも取り寄せたかったらしいのですが、植物の輸入の規制の難しさもあり、イタリア国内で手に入るものになったのだとか。でも、このガラスの繊細さとよく合った、これまた繊細なイメージの植物が見られて面白いものです。

イタリア館入り口 各国パビリオンの中でもやはりイタリア館はその規模、内容も大きく、見所も多いようです。

イタリア館内部 もちろん集客も一番といえるでしょう。

ちなみに今年の金獅子賞はポーランド館です。



看板 開催は11月23日まで。ヴァポレットのアルセナーレArsenaleまたはジャルディーニGiardiniで降りるとすぐに赤い看板が目に入ります。


記事・写真提供:特派員白浜さん

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