ヴェネツィアは海の上にできあがっている街。
水とその歴史と現在もこれからも続く生活は切っても切り離せない運命の共同体です。
水路を利用した人々の生活には、それを楽しむ文化も存在します。
船のレースもそのうちのひとつ。
夏前からヴェネツィア周辺では、いくつかのボートレースが開催されるのですが、9月最初の日曜日に催される『歴史的ボートレース(レガッタ・ストーリカRegata Storica)』はそのなかでも最も盛大で大切なお祭のひとつです。
「レガッタ」とはボートレースのことを指す言葉ですが、言葉の由来としては「リーガriga(リネアlinea=線、列)」やら「ラミジウムramigium(レメッッジョremeggio=オール)」または「アウリガーレaurigare(ガレッジャーレgareggiare=競争する)」などがあり、どれもこれも確かではありませんが、これらからできあがった言葉として現在も使われています。
レガッタ自体は、13世紀半ばごろより、ヴェネツィアのひとつの見せものレース的に一般的に発達したものです。現在のような大きなイベントとなったのは、19世紀後半にヴェネツィアで行われるビエンナーレ(2年に一度交互に開催される建築・美術展)の一環として観光目的に仕立てられたもの。
とはいえ、ヴェネツィアを訪れる観光客はもちろん、地元ヴェネツィアーニにとっても大切なイベントのひとつです。
内容は大きく分けて2部構成となっており、前半はパレード、後半はボートレースとなっています。
前半のパレードは、歴史行列(コルテオ・ストーリコcorteo storico)といい、1489年にキプロス王に嫁いだカテリーナ・コルナーロの帰還の歓迎パレードを再現しているもの。
彼女はキプロスに養女として嫁いだことでキプロスがヴェネツィア領となったということで、当時のヴェネツィア共和国発展の貢献者としても称えられている証です。
このパレードは華やかな船のパレードとして大変に見応えがあるもの。
15世紀当時の衣装を身にまとった貴族に扮した人々が、これまたその当時の船に乗り、サンマルコ湾からカナル・グランデを行列します。
そして後半はボートレースです。
こちらは前半の雰囲気とは一気に変わり、地元ヴェネツィア人にとっては、ここからが本番。
レースは4部に別れており、青年2人漕ぎ、女性2人漕ぎ、ヴェネツィア内の地区対抗のカオルリーナという6人漕ぎ、そしてゴンドリエーリ2人漕ぎ。
その合間に大学対抗8人漕ぎのレースも入ります。
女性レース
地区対抗レース
大学対抗レース
ヴェネツィアの船は基本的に立ち漕ぎが基本。
その中でこの8人漕ぎのみが座ってオールを漕ぐ、というスタイルなのもおもしろいところ。
それぞれは既定の船の形があり、それに準じた船に赤、青、緑、白、紫…などと色が配色されていて、カナル・グランデ上はいつもとは違う色とりどりの船を見ることができます。
上記4部のなかでもレースの順序も最後になっているゴンドラレースはやはり運河岸に詰めかける観戦者たちの応援の声も特に高らか。
ゴンドラ・レース
たくましいゴンドラ漕ぎの男達がけっこうなスピードでカナル・グランデをかけぬけていきます。
今年は優勝有力視されていた昨年の優勝者が違反で途中棄権となるなどのハプニングもありましたが、無事に全レースを終了。
この日は朝からなんだか怪しげな天気のヴェネツィアでしたが、レガッタの日は雨は降らない、というジンクスの通り、途中から日も差し、レース日和でもありました。
記事&写真提供:特派員 白浜亜紀 こちらもチェック