ヴェネツィアの有名な工芸品として知られるムラーノのヴェネツィアン・グラス。
こちらでは、Vetro di Murano(ヴェートロ・ディ・ムラーノ)と、「ムラーノのガラス」という呼び方をされています。
ムラーノ島はヴェネツィア共和国の保護の基に、そのガラス技術を守り続けてきました。
13 世紀のヴェネツィアは本島でのガラス作りによる出火の恐れと、技術の他地への流出を防ぐために、ムラーノへ職人を集結、保護と管理のもとにその伝統技術が発展してきたという歴史があります。
現在、その伝統品を模した安価な中国製などが氾濫しており、ガラスの伝統を守るアルティジャーナーティ(職人)達の環境も大変厳しくなっていることも、頻繁に報道されています。
しかし、コピー品と本物とでは、比較する価値もないほどの違いがあります(ヴェネツィアでのお買い物の際にはお気をつけください)。
ヴェネツィアの街を歩いていても、あちらこちらにガラスを売る店が点在しますが、その中でも本物の手作りの作品を見るとその違いは歴然です。
今回ご紹介するのは、生粋のヴェネツィア人、ガラスの仕事を始めてからもう50年以上も経つというアマーディ・ブルーノさん。
ブラーノ島出身の彼は、お父様の代にはガラスの窯を持っていたという、生まれついたときからのガラス職人。11歳の時にはムラーノ島の窯元でガラスの仕事を始めたそうです。
現在の店はヴェネツィアのサン・ポーロ地区にある路地に面した小さな小さな店舗兼工房です。
ロッソ・ヴェネツィアーノ(ヴェネツィアの真紅)を思わせる色の壁に色塗られた店内で、自分の作品に囲まれながら仕事を続けています。
彼の作品の特徴は、とにかく仕事が細かく、リアリティーに溢れていること。
彼の得意とするモチーフは、動物や鳥、そして昆虫など。
今にも動き出しそうなりそうな小動物たちです。
昆虫などにいたっては、細い触角などまでしっかりと仕上げられ、まるでそれがガラスだとは思えないほどの精巧さ。
非常に細かい点まで丁寧に、形そして微妙な色遣いなどはまさしく芸術的。
可愛らしい季節や地元の野菜などもあったり。
ラグーナの魚なども再現されています。
ガラスがこんな風に息をする生物になるなんて信じられない、と言いたくなるようなリアルさと、どこかお茶目な感じに見えてくるのは、彼の人柄の表れなのだと思います。
世界各地の展覧会への出品も数多く、職人技であり芸術的ともいえる彼の手仕事には世界中のファンが魅了されています。
ガラス一筋のアマーディさん。
ぜひ一度彼の工房にお立ち寄りください。
職人気質の中にユーモアセンスたっぷりの笑顔が素敵な、ヴェネツィアのガラス職人です。
今年初めには、巨匠キタノ・タケシも彼の元を訪れたとか。
Amadi Bruno
S.Polo, Calle dei Saoneri 2747, Venezia
Tel; 041.5238089
サン・ポーロ広場(カンポ・サン・ポーロ)からほど近く
記事&写真提供:特派員 白浜亜紀 こちらもチェック