フィレンツェに来たら、まずほぼ全ての皆さまが訪れるであろう場所ドゥオーモ広場。
イタリア各地では新型コロナウィルス対策のワクチン接種が着々と進んでいるおかげで現在は全土がイエローゾーンとなっており、ずっと閉まっていた大聖堂にもまた入場が出来るようになりました。
今日は大聖堂と広場に関わる、観光客の方々にはあまり知られていないであろうお話を幾つか紹介したいと思います。
まずは、大聖堂の右手からジョットの鐘楼脇を通り、ドゥオーモ美術館がある側に回ってみましょう。
なぜか路上にぽつんと一か所、白い円形の大理石が埋め込まれています。
さて、この円はいったい何かと言えば...
クーポラのてっぺんにある黄金の球が落下した場所なんです!
重さ約2トンもある、金で覆われた直径2.5メートルのこの銅の球体は、金細工職人で芸術家のアンドレア・デル・ヴェロッキオによって設計されました。
クーポラのてっぺんに取り付けられたのは1471年です。
こんなに高い場所に位置する金属の塊は、まさに雷には恰好の標的...。
実際、1492年には最初の落雷に合い、黄金の球とクーポラは多大な被害を負っています。
修復された球は、その後も幾度か落雷に合い、遂には1601年1月、雷が直撃した球体がドゥオーモ広場に落下するという2度目の大被害に。
その時の落下地点を記したのが、この白い円なのです。
もちろん、安全を守る対策はされています。
黄金の球は中は空洞で上部が開くようになっていて、年に3回この開口部から技術者が、上に立つ十字架も含めて劣化がないかなど、しっかり点検しているそうです。
さて、この大理石からクーポラに沿ってもう少し進むと、よーーーく見ないと分かりませんが、雄牛の頭部の彫刻が。
クーポラの入場口のちょっと手前辺りです。
この雄牛は、大聖堂建設のために資材を運ぶのに大きな力となった牛たちへの感謝を込めて彫られ飾られたということなのですが、ちょっと穏やかでない別説もあります。
大聖堂の建設中、この近くに仕立て屋の妻である美しい女性が住んでいました。
この女性は建設に関わった石工と愛人関係になります。
大聖堂の石造りの雨樋の制作に携わっていた石工。
イタリアではパートナーに浮気をされた夫や妻(や彼氏や彼女)は、俗語でCornuto/Cornuta=“角が生えた”と呼ばれます。
大きな角を持つこの雄牛、石工が意図的に仕立て屋の家の方角に向けて置いたという話がフィレンツェでは真しやかに語られています。
最後は、大聖堂の中にあるヘンテコな時計のお話です。
正面扉の裏に位置するこの時計、我々の知っている普通の時計とは、ちょっと違っています。
この時計盤はフレスコ画で、作者はルネッサンス時代の高名な画家の一人パオロ・ウッチェッロです。
ローマ数字で記された時間は時計の下部から始まり、12時間ではなく24時間となっていて、更にはこの時計は普通の時計とは逆回りになっているのです。
パオロ・ウッチェッロの時代は一日は夕方に始まり/終わり、また、1時間の長さは必ずしも同じではなく季節によって変化していました。
当時は“Ora Italica (イタリア時間)”と呼ばれる方法が使われており、日暮れの時間を基準に一日を24時間に分割していたのです。
逆回りである文字盤の配置は、古代の日時計が基になっているものといわれています。
今でも、この時計には我々が過ごす時間とは別の時間が流れています。
日暮れに合わせたものなので、日の終わりは現在でも一年中同じではなく、季節ごとに大聖堂の技術者によって調整されているそうです。
イタリアでは観光客の受け入れも、EU、シェンゲン協定国などの国からはコロナ陰性証明書等の条件付きですが自主隔離がなくなり実質解禁となりました。
早く日本の皆さんにも、またフィレンツェにいらっしゃってほしいです。
次にフィレンツェのドゥオーモ広場を訪れる日が来たら、これらのネタにちなんだ場所も見てみて下さいね。