こんな所で唐突に告白するのも憚られますが、
中国雑技団からボリショイサーカス、オリンピックのジムナスティックに至るまで
アクロバティック競技は全般的に
「見方によっては、これって結構エロいんじゃないのか・・・?」
・・・などと思った事、ありませんか?

全身タイツ的な衣装はもとより、180度開脚だったり、筋肉隆々の男性同士の絡みなど、 「技術の凄さ」に圧倒されて賞賛・感動しかできない状況では、
「ちょっとエロいよねー!」とは言いにくいものです。


Sscds_zumanity_pole_pierre_manningc

・・・が、ズーマニティを見ると、そんな(ひそかな)感想を抱いていたのは
私だけじゃなかったのだろう・・・と思います。

 

極論ですが、シルクに限らず、サーカスにおけるアクロバティックは
どれも似たようなものだったりします。
重力を無視したかのような、エアリアル、水中ダンス、空中ブランコに
トランポリン、ジャグリングなど、競技自体は、大差ありません。



その中で、シルクが際立つ理由は、通常のサーカスを芸術的にアレンジし、
個別の色づけ演出した事、なわけですが
このズーマニティの特別感は、芸術性に加えて、
実はみんなが心のどこかで思っていた、サーカスのエロスを交えた点、だと思うのです。



多数あるシルクのショーの中で唯一、18禁の大人限定のズーマニティ。
その全体の流れを一手に引き受けるのが、ドラッグクイーンのエディです。
(下記写真中央)

Sscds_zumanity_extravaganza_pierre_

言葉不要で演技と演出を見るだけのオーやカーとは違い、
ズーマニティはエディの、セクシーでユーモラスな進行で進みます。
「今日のオーディエンスにレズビアンのカップルはいるかしら~?!」
などと呼びかけたり、
客席を練り歩いて客いじりをしたり
他のシルクのショーにはない一体感を感じさせるのも、ズーマニティの特徴です。



そして、通常のサーカスでは「これって、何気にヤらしくない・・・?」って思う箇所を
それはそれは、思いっきりヤらしく表現。

たとえば、シルクでは定番とも言える、紐や布を使って宙吊りになるエアリアルは、
ソフトSMや緊縛な雰囲気満点だし
雑技団なみの体の柔らかさで、股関節が外れるんじゃ・・・・?と
心配になるおなじみの芸当も、具体的なカラミ、として表現。

 

Sscds_zumanity_midnight_bath_eric_j 
最初はソフトな感じで始まりますが、中盤から女性のトップレスは当たり前、
一瞬のドッキリとはいえ、ボトムレスも登場し、
男性も履いてるのか履いてないのか、ギリギリな状態。

とはいえ、その辺りは、さすがシルク・ドゥ・ソレイユ。。

場末のキャバレー、というよりは、デカダンス感たっぷり。

 ピアノの前でたたずむトランスジェンダーの男性
(美しい足に、赤いハイヒールが素敵)がアンニュイな雰囲気でタバコをふかす、、
なんて演出は、まるで映画のワンシーンのような美しさ。

 

女性と男性、女性と女性、男性と男性、トランスジェンダー、など、性別を超え
LGBT(セクシャルマイノリティ/性的少数者)、ストレートに関わらず、
この世にいるすべての愛の形を祝福するするのが、このズーマニティ、なわけです。

なので、(よっぽどリベラルでオープンな家庭でない限り)
親子での鑑賞は控えたほうが無難ですが
過激でありつつ、どこか儚げなセクシーさを受容できる方なら、楽しめるはずです。

Sschains 

昨年、アメリカの最高裁で同姓婚が合憲と判断され、
LGBT(セクシャル・マイノリティ/性的少数者)界は祝福ムードに包まれるなど
今や人権問題として世論と最高裁を含め大きな動きが続いてます。



しかし、それを良しとしない、保守派が多く存在するのも事実です。
正に今、ノースカロライナ州でトランスジェンダーに対する差別法
(通称トイレ法と言われるHB2法)や
ジョージア州、ミシシッピ州では宗教の自由法、と呼ばれる、
宗教を理由にLGBTを差別してかまわない、とされる法案が出て来たことで
多くの論争を生んでいます。



ジョージア州の法案には、ディズニー、マーベル、20世紀FOXといった
大手映画会社がこぞって反対、 同州での映画撮影をキャンセルした事もあり
州知事により法案が撤回されました。



そして、今最もゆれてるのがノースカロライナ州。
ブルース・スプリングスティーン、パールジャム、ボストン、といった
人気バンドや、元ビートルズのリンゴ・スターが
同州でのコンサートを、法案の反対表明としてすべてキャンセル。

PAYPALやドイツ銀行は同州に出す予定だった新しいビジネスを白紙に戻し
プロバスケのNBAも同法の撤回がなければ、
来年のオールスターゲームのキャンセルの可能性を公言。
ワシントンDC、ニューヨーク、コネチカット、ミネソタ州に至っては
公費を使った同州への出張を禁じる決定し、
アップル、アメリカン航空、コカコーラ、ポルシェ、フェイスブック・・・といった
さまざまな業界が反対声明を発表し
各界から強い批判がでています。



そんななか、シルク・ドゥ・ソレイユも、
ノースキャロライナ州数箇所で公演予定だった巡回ショー、OVOの
州内全公演のキャンセルを決定しました。

LGBTを含む世界観を持つズーマニティの開幕は2003年。

最近の流行、としてのLGBT支持ではなく、
10年以上、セクシャルマイノリティを含む人権問題に
取り組んでいるシルクとしては当然の決定だと、もっぱらの評判です。

 

そんなシルクとアメリカ世論の背景を思いながら、見てみると
ズーマニティの印象は、ずいぶん異なるかもしれません。



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BY:AY

全写真提供元CIRQUE DU SOLEIL

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