皆さま、「アリバダ」という言葉を聞いたことがありますか?
「アリダバ」とよく間違われますが今回は「アリバダ」です。
スペイン語のARRIBAR(到着する)から派生する言葉で、
数千、数万というウミガメが一斉に上陸する現象のことをアリバダといいます。
このアリバダを発生させるのはヒメウミガメ、このヒメウミガメの生息域は、
アンティル列島、南アメリカの北部沿岸、西アフリカ、インド洋、オーストラリア、
そして東南アジアと広範で基本的に単独で行動するのですが、こと産卵となると
メスは群れをなして自分が生まれた海岸に戻ってきます。
世界に数か所アリバダが発生する海岸がありますが、世界で最も大規模で
重要なアリバダが起きるのがコスタリカのサンタロサ国立公園にある
ナンシテ海岸とオスティオナル野生生物保護区のオスティオナル海岸の
2箇所となります。
両方ともコスタリカにあるというのは、世界に先駆けて生物保護政策を
推進してきた成果だとおもいます。嬉しいですね。
ナンシテ海岸は研究者のみアクセス可能で一般の人の訪問はできませんが、
オスティオナル海岸のアリバダは、ローカルガイドと同伴であるならば
観察することができるのです。
ただし、アリバダはいつでも見れるという現象ではありません。
1回のアリバダの期間は3日から5日、基本的に1カ月に1回オスティオナル海岸
ではアリバダが発生します、8月から11月末ごろまでにかけてがピークとなり、
上陸するウミガメの数は驚くばかりの数になります。
下弦の月の前後や潮の満干などの自然状況もアリバダ発生と関わってきますが、
確実ではなく未だ未知数の大きな自然現象です。
基本的に夜から深夜にかけて一斉上陸が始まります。
フラッシュの発光は厳しく禁止されているのでカメラの出番はなく。。
私が体験した光景は言葉でしか紹介できませんが、圧倒的な数のウミガメが
足の踏み場もないほど上陸して必死に穴を掘って卵を産むダイナミックで
生々しい光景は、種を残すためのヒメウミガメの手段という彼らのDNAを
全身で感じることができた貴重な体験でした。
翌日の早朝、まだアリバダが続いているか見に行ったのですが、
残っていたウミガメ数匹、そして何十羽というクロコンドルと卵を掘り返す
地元住民が大勢いました。
コスタリカでは、野生生物保護法によりウミガメや卵を捕ることは
禁止されているのですが、オスティオナルだけは国内で唯一ウミガメの卵を
合法的に捕ることを許されているのです。
卵を掘り出す許可を得ているのは、オスティオナル地域開発協会の人達で、
環境省の監督の下、アリバダが発生して最初の数時間の間に生まれた卵は
掘り起こして捕っても良いことになっています。なぜかというと、
狭い海岸に次から次へと産卵にくるため最初の卵は次のウミガメに掘り起こされ
結局は死滅してしまうからなのです。
地元住民はこの掘り起こした卵を正規に販売し、地域開発事業の資金にしたり、
住民の間で分配します。
地元の人に食べるよう勧められたウミガメの卵、生卵にピリ辛のソースをかけて
一気に飲み干すのが主流です。精力がつくとのことで、男性が好んで飲んでいます。
一匹のウミガメが一度の産卵で産む卵は100個で、そのうちの1%しか成体に
なることは出来ないと言われます。「アリバダ」という集団による産卵は、
その数が捕獲者を圧倒させ、身を守るために備わった方法とされますが、
エコシステムとは実にシビアであること、そして人間は、そのエコシステムの
連鎖を断ち切ることも出来るし、保護することも出来る立場であることを
改めて考えさせられた旅でした。
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【アリバダ観察のチャンスあり!ウミガメ産卵観察ツアー1泊2日】
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http://activities.his-j.com/TourLeaf/SJO0023.htm
【豆知識】コスタリカのウミガメ
コスタリカには、全世界に生息する7種のうちの5種《タイマイ、アカウミガメ、ヒメウミガメ、クロウミガメ*(アオウミガメ)、オサガメ》が確認されています。いずれも絶滅危惧種または近絶滅種に指定されておりますが、年間を通して太平洋側またはカリブ海側のいずこの海岸で、これらのウミガメの産卵または卵から孵った子供が海へ戻るところを観察することができます。