観光 2013.06.12
前回の「景色編」に続いて、今回と次回の2回に分けて、寝台車の乗り心地について書いてみます。

VIA鉄道「カナディアン号」には2種類の寝台が用意されています。その一つが今回ご紹介する「berth(バース)」。そしてもう一つは個室寝台です。

VIA RAIL / SLEEPER PLUS
寝台列車の歴史は古く、最初の寝台車は19世紀中頃の1857年、アメリカ・マサチューセッツ州の車両会社で製造されました。1865年になると、ニューヨーク生まれのGeorge Pullman氏は居住性の悪い馬車をベースにした初代の寝台車を改良し、プルマン客車(パレス・カー)と呼ばれる優雅な寝台車の形を作り上げました。プルマン社はこの車両の成功により20世紀後半に至るまでアメリカを中心に多くの車両を製造し、食堂車やラウンジカーなど次々と新しい車両を加えながら、車両の製造と車内サービスの提供を一手に引き受ける「走るホテル」会社として成長を極めたわけです。

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バンクーバーを出発してトロントに向う「カナディアン号」は、このプルマン客車を今に伝える「レトロ・カー」で、1950年代に製造されたものです。世界中の車両が新型へと変わる中、50年以上も大切にされながら今も現役で使われている歴史的価値の高い車両は、製造当時にアメリカで流行していた流線型を取り入れた「STAINLESS STEEL EQUIPMENT(ステンレスカー)」。溶接技術で最先端の技術を誇っていたミシガン州の「Budd Company」が1954年~55年に製造し、その後カナダで改装されたものです。長距離旅行がジャンボジェットに取って代わられる前、鉄道が唯一の手段であった20世紀前半に隆盛を極めた車両製造技術の粋とアイディアが、「カナディアン号」にはふんだんに詰め込まれているのですね。
車両にはそれぞれ名前が付けられており、「BAYFIELD MANOR」が私が乗った車両。BAYFIELDは19世紀にカナダで活躍した探検家の名前で、由来を記すプレートが今も車両内に埋め込まれています。

VIA RAIL / SLEEPER PLUS
さてバンクーバーからトロントまでの4,500キロの列車の旅、最初のジャスパーまで私が宿泊したのは「berth(バース)」と呼ばれる寝台。寝台車のルーツとも言えるタイプの座席は昼間は向き合うオープンな座席をベースに寝台にするため、「Open-Section Accommodation(開放型寝台)」と呼ばれています。

VIA RAIL / SLEEPER PLUS
VIA鉄道のバース席は昼間はゆったり座れるサイズの向かい合わせの座席に2人が座り、夜になると上下寝台となって一人が下、一人が上の寝台に割り当てられます。写真は寝台がセットアップされカーテンが引かれた状態。下の寝台は座席がベースになり、上は天井にしまわれた閉じた寝台を開けて固定します。上の寝台へのアクセスは、備え付けの梯子を使用。下の寝台だけには窓がありますが、備え付けのシールドで朝日を遮ることが出来ます。

VIA鉄道の「Sleeper(スリーパー)」クラスでは各車両に係員が常駐し、乗客のアシスタント役を果たします。中心的なサービスはベッドメークと、「Turn-Down」。寝台車の成り立ちの中でプルマン氏が目指した「走るホテル」という発想は、設備だけでなくサービスにも及ぶものですが、「走るホテル」を目指したVIA鉄道のサービスは、営業開始当時のものが今にも伝えられています。

バンクーバーを出発した後ラウンジで過ごした約1時間後、座席に戻るとすでに座席は寝台へと変わっていました。乗客のいない時を見計らって素早く寝台を整える、VIAのサービスの伝統に嬉しい思いがしました。荷物等はベッドの下へ、小さなバッグ類はベッドメークが終わったベッドの足元の棚にしまわれていました。翌朝も、朝食に出ている間に寝台は座席へと変えられていました。

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「Turn-Down」は、ベッドカバーの端が三角に折られキャンディーなどが枕元に置かれる、高級ホテルのみに行われるホスピタリティー・サービス。私の寝台でもベッドカバーが折られ、シーツの上にはVIAのロゴが入った銀のパッケージに入ったチョコレートが1本置かれていました。

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寝心地は、思いのほか快適。しっかりした感触のベッドは薄手のパッドの上にシーツが敷かれ、枕元には読書灯がありました。廊下と寝室を隔てるカーテンは厚手のしっかりしたもので、数カ所のボタンで左右のカーテンを中央で止めると完全にプライベートな空間になります。
走行中の車両の揺れについては、ジャスパーまではスピードがそんなに速くなかったので気になりませんでした。寝る方向は足元が進行方向に向っていましたので、車両の横揺れには敏感かもしれないですね。ジャスパーまでは昼間は展望車両にずっといたので、バース寝台で充分。ただし、電源がなかったので、携帯やパソコンの充電は車列最後尾の展望室のコンセントを使いました。

VIA RAIL / SLEEPER PLUS
また各車両には1つ共有のシャワールームがあり、部屋にはバスタオルとハンドタオルが2組、プラスチックバッグに入った石けんとシャンプーと共に提供されます。シャワーはボタンを押すと2分ほどお湯が出るタイプ。使ったタオルは、使用済みタオル入れに入れます。

さて次回は、ジャスパーからウイニペグを経由してトロントまで宿泊した個室寝台についてレポートいたします。


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    • 投稿: SEAGULL -2013年6月14日 (金) 11時56分

      ■無題
      私は一人旅だったので個室寝台にしました。外国らしいなぁ~と感じたのは、部屋の中のトイレがベットにする時に、トイレの上にベットが乗っかるので一度ベットにしてしまうとトイレの使用か゜出来なくなってしまうのです。日本人の感覚からするとう~ん・・・(^_^;)という気もしますが、狭いシングル個室なので仕方ないかな。展望室の人気は凄くて空席は余りありませんでした。又のんびりと列車の旅がしたいです。

    • 投稿: his-vancouver -2013年6月14日 (金) 20時55分

      ■Re:無題
      >SEAGULLさんコメントありがとうございます!動く列車なので、キャビンのつくりが手狭だったり驚くこともありましたが、本当に外国に来たという雰囲気が感じられるものになっていました。鉄道の旅の醍醐味ですね。

    

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