サワディーカップ
メオダムです。
先日、社内のタイ人スタッフからお酒をいただいた。
メオダムはお酒が大好き。
ビールにウイスキー、ワインに日本酒となんでもござれ。
しかし、若い時と違って、最近はそうめったやたらと飲むようなことはしなくなった。
そうしたら、健康診断の数値が若い時より良くなってて、喜んで祝い酒を鯨飲してしまった。
そのいただきもののお酒ですが、
いままでメオダムが飲んだことのないお酒です。
緑色のボトルに入っていますが、たぶんこのボトルはビールの空き瓶の再生品なのでしょう。
なんとなく、密造酒のような感じですが、ちゃんと納税をしているしるしに王冠には収入印紙のシールが張られています。
ボトルに貼られたラベルもなんとなく田舎臭いラベルで「ワイン・ナムターン・ソット」と書かれています。
ナムターン・ソットと言うのは砂糖椰子(パルミヤ椰子)のジュースのこと。
砂糖椰子のジュースと言うのは、ココナツシュガーと同じように、椰子の花の房からとった樹液と言うか、花の蜜。
この椰子のジュース、採取して数時間もすると、発酵し始めて、お酒になってしまうそうです。
英語では別名"Sky Beer"とも呼ばれているそうで、なるほど空に向かって伸びる椰子の木のてっぺんからの授かりものって感じがする語感です。
椰子酒ならば、メオダムも昔、昔、田舎の方でよく飲ませていただいた記憶がある。
あれはタイだったか、ビルマだったか、もう記憶は遠くなっているが、アルコール度数は高くはなく、ちょっと酸味と独特の発酵臭のある軽いお酒だった。
この椰子酒を蒸留すると、アラックと言う強いお酒に変身する。
しかし、ラベルには「ワイン」と書いてある。
これはただの椰子酒なんかじゃないよってことなんだろう。
ラベルを更によく読むと、アルコール度数は10.2度。
なるほど、普通の椰子酒よりアルコール度は高くてワインに近いようだ。
どんな田舎の業者がこしらえているのかと思って、さらにラベルを老眼こすりながらよく読んでみると、バンコク近郊にあるパトゥムタニ県の「ラチャモンコン大学」の文字が読み取れる。
この大学で製法を研究したようだ。
そして生産地はナコンサワン県ともなっている。
ナコンサワンはタイ中部、バンコクの北250キロほどにあり、さらに北の方から流れてくる、ピン川とナーン川が合流して、チャオプラヤー川になると場所でもある。
能書きはこのくらいにして、さっそく王冠をコンコン、スポッと抜く。
ほんの少し濁りのある透明な液体。
トクトクトクとグラスに注ぐ。
鼻を近づけて匂いを嗅いでみる。
椰子酒のような発酵臭はなく、クセのあまり感じられない、少し甘い香り。
冷蔵庫で良~く冷やしてある。
グラスに注いでも泡がたつということはない。
見た目は白ワインそっくり。
ではでは、テイスティングを、、、。
香り同じく、ほんのりとした甘さが口腔を満たす。
酸味はない。
渋みもない。
これって、美味しいんじゃない。
どことなくドイツのアイスワインを彷彿とさせる。
つまり、それはデザートワインの感覚と言うことかもしれない。
田舎臭い椰子酒なんかとはまったく別物のようだ。
パルミラ椰子から作ったワインなので、敬意を込めてパルミラ・ワインと呼ぶことにしよう。
メオダムは、どうせ田舎の酒だろうから、田舎料理のソムタムでも食べながら飲もうかと思って、ソムタムを買ってきておいたのだが、この味わいなら、塩ゆでした豚肉やコーンビーフ、ライ麦パンなんかがマッチしそうだ。
しかし、食卓の上には、ソムタムとモチ米のカウニャオしかない。
ウーム、ソムタムとの相性はどうだろうか、、。
ソムタムの強烈な味に、デザートワインもどきのパルミラ・ワインはどう出るか、真剣勝負です。
[ソムタム・タイ:青い未成熟パパイヤの千切りを使った辛い和え物]
冷えたパルミラ・ワインをテイスティングしたときには、ほんのりとした甘さに感じたが、唐辛子が大量投入され、柑橘系の酸味やナムプラーの腐臭がミックスした自己主張の強すぎるソムタムを相手に、唐辛子で麻痺しかかった口にパルミラ・ワインを含んでみる。
オオゥ。
さっきまでの控えめな甘さから、強い甘味に変化している。
舌先に絡みついた唐辛子の辛味成分カプサイシンが、どんどん中和されていくのがわかる。
これならタイ・カレー何かと一緒にいただいても面白そうだ。
やはり、タイのお酒なので、タイ料理との相性は悪くなかったということか。
20年ほど前まで、メオダムは東京は平河町にある東京グリンツィングと言うレストランへしばしばワインをいただきに行っていた。
高名なオーナー・ソムリエがいらして、いつもワインの話を聞かせてくださる。
当時もあんまりお金のなかったメオダムは、ディナータイムが終わってから入店し、ワインとオードブルだけをいただいていた。
「安いカリフォルニアやチリのワインでお願いします」とメオダムが言っても、
「いいえ、やはりフランスのワインを飲んでください、安めでもしっかりしたのがありますから」と、ワイン蘊蓄とともにソムリエナイフで栓を抜いてくださった。
バンコクで、砂糖椰子から作ったワインを飲んで、メオダムがアイスワインに似てるとか、勝手なことを言っていることを知ったら、きっと「ちゃんとしたワインを最近飲まれてないんじゃないですか」と言われそうだ。
[東京グリンツィングの店内 オーナーソムリエのワイン話は尽きることがありません]
でも、このパルミラ・ワイン気に入った。
どこで手に入れたのか、明日でもスタッフに聞いてみよう。