サワディー・にゃ~お。
ピサヌローク支店のメオダムです。
この週末、所用があってピサヌロークからバンコクまで往復してきました。
バンコクでの所用を済ませたところで、所持金はたったの200バーツしか財布に残っていません。
ちょっと過酷だけど、鉄道の鈍行3等車を利用して、ピサヌロークへ帰ることにしました。
で、今日はバンコクからピサヌロークまでの乗車レポをお送りします。
ピサヌローク行きの列車が出発するのは、フアランポーンと呼ばれるバンコク中央駅。
新聞報道によると、今年の11月には新しくバンスーというところに新しくターミナル駅ができて、列車の発着はすべてそちらへ移り、このバンコク中央駅は廃止になると書かれていました。
建物は博物館として再利用されるそうですけど、街の中心にあって、鉄道利用者にはこの駅の方が便利なんだけど。
かまぼこドーム型をした駅舎内に入り、切符を買います。
自動販売機ではなく、どこも有人の窓口での対面販売です。
去年の暮れから切符の販売には新しいコンピューターシステムが導入されたそうで、パソコンからも指定席をオンライン予約ができるようになりました。
で、そのシステムは利用者には便利なのですが、窓口で切符を販売する係員には、キーボードから打ち込まなくてはならない項目が多く過ぎて、大変なようです。
「ピサヌロークまで1枚」とメオダムが行き先を言ってから、切符ができるまでに1分以上の時間がかかりました。
パスポートまで提示を求められ、そのデータまでキーで打ち込んでいるのです。
こうして発行された切符は、ちゃんと名前まではいっています。
運賃は、たったの69バーツ。
ピサヌロークまで直線距離でも350キロくらいあるのに、69バーツ。
日本円で200円ちょっとくらい。
日本だったら地下鉄やバスの初乗り料金くらいです。
実は、タイ国鉄は政治的な関係で、もう何十年も運賃の値上げが認められてきていないらしいのです。
その間に、物価は随分と値上がりしました。
同じ大衆向けの公共交通機関であるバンコクの市バスは1.5バーツから8バーツと5倍くらい値上がりしています。
さて、このバンコク中央駅の名物ともいえるものに、ホームでの車両洗浄があります。
これはホームに停車中の車両にホースで水をかけ、デッキブラシでゴシゴシと洗うんです。
日本だったら、そんな作業は車庫で、それも自動洗車機でやるのでしょうけれど、バンコクではホームでジャバジャバ・ゴシゴシが行われています。
新しいターミナル駅へ移ったらまう見られなくなる光景かもしれませんね。
これがメオダムが乗った10両もつながる客車をピサヌロークまで引っ張って行ってくれるディーゼル機関車です。
アルストムというフランスの鉄道メーカー製です。
このメーカーはフランス版新幹線TGVなども作っている世界的メーカーです。
メオダムはエアコンがなく窓を開けて走るタイの列車に乗るとき、なるべく編成の前の方の車両に乗るようにしています。
理由は黄害を防ぐためです。
タイの古い客車にはトイレがあるのですが、そのトイレがポットン式トイレ、つまり垂れ流し式のトイレなんです。
今の人には信じられないかもしれませんが、日本だって40年前くらいまでは田舎の列車はこの方式でした。
排泄物は、そのまま線路上に撒き散らされるわけです。
なので、駅に停車中はトイレの利用はマナー違反となります。
ご利用は走行中にということになるのですが、走行中は落下物が線路上へ着地する直前に、列車のスピードにより発生する風圧にさらされることになります。
そして、その一部は風圧で飛沫が巻き上げられることだってないとは限りません。
なので、メオダムは飛沫を浴びる可能性が低くなるように、なるべく前の方の車両に乗り込むようにしているのです。
お食事中の方、ごめんなさい。
エアコンのない3等車なので、天井では扇風機が回っています。
この客車は50年以上も前に日本で作られた車両です。
むかし、日本の国鉄でもこんな扇風機が回っていました。
さて、定刻の09:25にピサヌローク行き鈍行列車はバンコク中央駅8番ホームをゆっくりと出発しました。
予定通りなら、8時間半後の17:55にピサヌロークへ到着するはずです。
走り出して最初に見えてくる景色は、あんまりバンコクの玄関口にふさわしいものではありません。
線路際に不法建築で建てたバラックが並ぶスラムの中を進んでいきます。
人も犬も、線路上を歩き、バラックの間口からは彼らの生活が丸見えです。
これが車内の様子です。
4人掛けのボックスシートでさっそく横になって寝ている女性もいます。
このくらい空席があると、3等車でも前の座席に足を投げ出して座って行かれるので、2等車よりも快適かもしれません。
走り始めて30分ほどでバンスー駅に到着。
ここに見えている巨大なガラス張りの建物が、新しいターミナル駅で、東南アジア最大の駅になるのだそうです。
確かに大きさだけは、大きくて堂々としていますが、やっぱりこの駅はバンコクの中心部とのアクセスが良くないと思います。
地下鉄があるのですが、一本きりですし、乗り換えにずいぶんと歩きます。
こうした不便さは、空港へ向かうエアポートリンクのマッカサン駅にも共通します。
マッカサン駅も、巨大なガラス張り建築ですが、立地と交通アクセスが悪く、当初の計画にあったシティーエアーターミナルとしての役割を全然果たせていません。
もともとタイの駅は、ホームが低くて、地面からの高さが30センチくらいしかありません。
なので、車両の出入り口には階段状のステップがあって、ヨッコラショと上り下りしなくてはなりませんでした。
しかし、この不便さを解消しようと、あちこちの駅で日本の駅にあるのと同じように地面から1メートル半以上もあるホームへの改装工事をしていました。
この写真は工事が完了したランシット駅ですが、ホームは客車の床と同じ高さにかさ上げされていますが、ステップの部分があるため、車両に乗り込む際に、ステップの下へ落ちないように、やっぱりヨッコラショと大股開いて、乗り込まなくてはなりません。
お年寄りや小さな子供には危険な感じがします。
車内の通路をたくさんの物売りが行き来します。
日本風にいえば車内販売ですが、特定業者が行っているのではなく、沿線住民が好き勝手に商売をしている感じです。
ガパオライスやバミーヘーン(汁なし和えそば)、ガイヤーン(焼き鳥)、ムーピン(豚串焼き)など食べ物や、飲物が中心。
カップラーメン売りはお湯の入ったポットをぶら下げています。
写真のガパオライスなどはひとつ20バーツで、価格的には良心的な値段です。
ボリュームはちょっと少な目。
この列車には食堂車が付いていないので、メオダムもお昼時なにったら何か買って食べようと思っていました。
バンパイン離宮があるバンパイン駅には、ホームにベージュ色の瀟洒な建物が立っています。
これは王族の方々専用の待合室なのだそうです。
同じような待合室がリゾート地フアヒン駅にもあります。
しかし、現代でも王族たちは離宮へ行くのに鉄道を使うことがあるのでしょうか?
アユタヤ近くではローティー・サーイマイを車内で売っていました。
ローティー・サーイマイはロティという丸く薄い生地で、綿菓子が繊維状になったものを包んで食べるもので、アユタヤの名物ということになっている。
車でハイウェイを走っていても、ハイウェイ沿いにこのローティー・サーイマイを売る露店が並んでいる。
午後1時近く、クメール時代の遺跡が鉄道線路沿いに点在するロッブリーを過ぎる。
ロッブリーはクメール時代にラヴォー王国の都があった場所ともされ、たくさんのクメール風の遺跡やアユタヤ時代に副都であったことで、アユタヤ時代の遺跡も多い。
しかし、遺跡以上にサルの多い街でもある。
サルは神聖な動物とされて、保護されており、町中サルが我が物顔でうろついていて、ちょっと怖いくらい。
駅のホームにも大きなサルのオブジェが置かれています。
さて、そろそろお腹もすいてきたので、何か食べたくなってきたのですが、さっきまで煩いくらいに通路を行き来していた弁当売りが全然来てくれません。
たまに来るのは飲物売りだけ。
鈍行列車なので、5分から10分おきくらいに駅に停車していくのですが、駅のホームにも売り子の姿が見られません。
チョンケーという駅で、停車したままなかなか動き出そうとしません。
なんで止まっているのか車内アナウンスもありません。
もっとも、車内放送設備そのものがないのだからアナウンスなど期待する方が間違っています。
ホームに売店でもないものかと見まわしましたが、それらしきものはありませんでした。
むかしはタイの田舎の駅では、果物やお菓子、弁当などいろいろなものを売り子が声をからしながら売り歩いていたものですが、どのホームにもそんな姿は見られません。
やがて、石油を積んだタンク車を長く連ねた貨物列車がやってきて、こちらの列車も汽笛を鳴らして出発と相成りました。
このあたりはまだ単線で、対向車があるとどこかで待機してやり過ごさなくてはなりません。
貨物列車が遅れていたのでしょうか、20分ほどこちらも遅れることになりました。
単線では不便なので複線にしようと盛んに工事をしているのも分かります。
新しく路盤を作ったり、レールを敷いたり、橋をかけたり、、、
ダンプカーやパワーシャベルが働いてますが、いまは乾期の盛り、ものすごい土埃です。
全開にあけた窓から埃が容赦なく舞い込んできます。
ナコーンサワンはタイ中北部を代表する大きな都市で、チェンマイの方から流れてくるメーピン川とピサヌロークからのナーン川が合流して、川の名前をチャオプラヤー川に変える場所でもあります。
しかし、ナコンサワンの街は川の右岸にあり、鉄道駅は街から少し離れ、そして川を渡った左岸側にあるため、周囲を見回しただけでは大きな町と言った印象はありません。
ナコンサワンを過ぎて少し行くと、タイ最大の淡水湖沼ブーンボーラペットが見えてきます。
とても大きな湖沼で、今の季節はたくさんの渡り鳥を観察できる場所となっています。
ここでようやくメオダムは食料を少し確保することができました。
ナコンサワンは華僑の街としても知られており、車内販売でタイでカノムチープと呼ばれるシュウマイを売りに来ました。
7粒入って20バーツ。
空腹のあまり、あっという間に食べ尽し、写真に撮っておくのを忘れました。
太陽もだいぶ傾き始めました。
車内にはどこかで練習試合にでも参加してきた帰りなのでしょうか、運動着姿の高校生たちが乗り込んできました。
列車は20分ほどの遅れを保ったまま、ピサヌロークへ向かって進んでいきます。
既にバンコクを出てから8時間が過ぎ、バンコクから乗り合わせた乗客はメオダムしか残っていないようです。
隣の窓越しに夕日が沈んでいきます。
やがて、ピサヌロークの空港入口が見えて、踏切では列車の通過を待っている車の列が長くなってきたところで、終点のピサヌローク到着です。
時刻は18:15。
20分の遅れです。
バンコクから約9時間もかかりました。
旅をするなら目的地までの移動手段は、なるべく早く快適な方が方が良いでしょう。
飛行機なら1時間とかからない距離を、埃まみれになりながら9時間も列車に揺られるのはナンセンスと思われるかもしれません。
でも、この鈍行列車でピサヌロークへ向かうというのが目的なので、メオダムはちょっとした達成感を味わうことができました。
別に太平洋をヨットで単独横断するようなアドベンチャーでもなく、だれでもやれてしまうことだし、どうでもいい事なんだけど、でも旅をしたなぁって実感はあります。
降り立った乗客は、一列に並んで体温チェックを受けることになります。
タイの汽車旅で、ひとつ残念なのは、車内での飲酒が禁止されていることです。
列車から降りて、メオダムはまっすぐナーン川沿いの空飛ぶ空芯菜食堂へ。
ここで最後に残った100バーツ札を使って氷入りのビールをキューっと飲み干しました。
旨い!
冒険ともいえない冒険から生還した喜びを感じるのど越しです。
でも、よく考えると、このビール、バンコクからピサヌロークまでの汽車賃よりお値段が高いんですよね。