2007.04.12
あることをご存知でしょうか。
南の島といえば、白い砂浜とヤシの木ですが、
ハワイ島にも白砂はもちろんあります。
二つ目は、島内観光などで有名な黒砂海岸です。
それでは3つ目の砂の色はというと、緑色の「グリーン・サンド」なのです。
実は、この「グリーン・サンド・ビーチ」へ行くのは、
なかなか大変な仕事です。
このビーチは普通の車では行ける道が無いので、
サウスポイント近くの駐車場に車を止めて、
そこからハイキングをすることになります。
私がこの島に来たばかりの頃に、
自分の目でグリーン・サンド・ビーチを見たいと思い、
誰か一緒に行く人はいないかと友人たちを誘ってみました。
しかし、この島の住人はこのビーチがどんな所にあるのかを
よく知っているので、誰も一緒に行こうとはしません。
誰もが口を揃えて「疲れるからイヤだ」とか「暑いからイヤだ」とか、
情けない返事ばかりです。
日頃から運動不足ぎみのこの島の住人は、
グリーンサンドビーチを見たことが無い人が意外に多いのです。
仕方がないので、週末に私ひとりで行くことに決めました。
スニーカーを履き、バックパックに水とオニギリを詰めて出発です。
予定通り車を止めて、歩き出すと直ぐに原野に入ります。
暫らく行くと、草原の中のトレイルらしき道もいくつかに枝分かれして、
またひとつの道になります。まるでアミダクジのようなルートですが、
「マァ、海を右側に見て進み、帰りは海が左側なら迷うことは無いだろう・・・。」
ぐらいの気持ちで、さらに前進。
歩き出して1時間ほど過ぎた頃から、まったく日かげが無いので
直射日光の暑さが全身に堪えてきました。
「やっぱりヤメておけけば良かった・・・」とか
「人の言うことは素直に聞くもんだ・・・」とか
ブツブツとひとり言を呟きながら歩き続けます。
昼食のオニギリを食べてから、さらに歩くとそれらしき小高い丘のような場所に到着。
その丘の淵から下を覗くと、緑の砂浜・・・と言うより、
ウグイス色の砂浜が崖の下に広がっております。
「ウ~ム」とため息をつき、暫し見入ったあとに一休みです。
しかし、せっかくここまで来たのだから、砂浜に降りないと意味はありません。
まるでスキーの上級者用の斜面並みのガケを降りてクリーン・サンド・ビーチに無事着陸。
このグリーンサンドを手にとって見ると、砂粒が強烈な太陽の光に照らされてキラキラと輝き、
なかなか綺麗なのです。聞いた話によると、
この砂はもともと火山の溶岩に含まれていたカンラン石が
細かく砕かれてできたものだそうです。実はこのことが、
あとで私の不幸のもとになるのですが・・・・。
私は、往復4時間以上も炎天下を歩くこのビーチに、
生涯もう二度と来ることはないと思いました。
そこで、この砂を記念に家に持って帰ることに決めたのです。
オニギリが入れてあったビニール袋を取り出し、砂を詰めるとイザ出発です。
崖を上り、日差しで意識が遠くなりながら、またひたすら来た道を歩き続けます。
オニギリが無くなり代わりに砂が入ったバックパックの重さを感じながら、
暑さのあまり帰り道もまたひとり言です。
「バックパックの重さは、オニギリと水を入れてたときと、
今の砂ではどちらが重いのだろうか、イヤ、
きっとオニギリと水はお腹の中で同じ重さだから、
砂の分だけカラダ全体が重くなっただけか・・・ブツブツ・・・。」
周りに誰もいない原野だから良いものの、
こんなひとりごとを言いながら歩いてくるオヤジと町ですれ違ったら、
自分でも間違いなく道を譲ります。
やっと我が家に戻り、持ってきたグリーンサンドを綺麗なガラスの容器に入れました。
実は「疲れるからイヤだ」とか「暑いからイヤだ」と言っていた友人たちに、
この砂を見せびらかしてやろうと計画をしていたわけです。
その夜に友人たちを集めて、ビールを飲みながら頃合を見計らい、
例の「緑の砂」を披露しました。私は「溶岩とカンラン石」のウンチクを得意げに語り、
「ど~だ、スゴイだろ」とすべて予定通りです。
まるで月面から月の石を持ち帰ったアポロ計画の宇宙飛行士の気分です。
そのとき、友人の一人が突然とんでもないことを言い出しました。
「オィ、これはヤバイよ、ハワイ島では昔から溶岩にまつわる物を持って帰ると、
火山の女神ペレのタタリがあると信じられている。
きっとこの砂もこんなところに置いておくと、絶対に不幸なことが起こるぞ。」
次に、それを聞いていた別の友人も、
「そう言えば、溶岩のカケラを持って帰った観光客も、
帰国後に親類に不幸があったとか、大怪我をしたとかでよく溶岩を送り返してくるよな。」
などと追い討ちをかけ、さっきまでガラスのビンに入れてある砂を振って
喜んでいた友人まで「古代人の言伝えは、タタリを恐がらせて、
実は自然保護の意味もあるんだ、この砂は元の場所に返した方がいいよ。」
と言い出しました。私は「砂を返す・・・無理だよ、そんなこと。
NASAだって月の石を月面に戻してないじゃないか!」
とワケのわからない言い訳を試みましたが無駄でした。
私は、友人たちに翌朝の出発を命じられたのです。
私はもう二度と行くことは無いと思っていたグリーン・サンド・ビーチに、
今度はオニギリと砂の入った2倍の重さのバックパックを持って、
また往復4時間の過酷なハイキングをすることになりました。
私は、歩きながら「きっとこの炎天下の2往復は、女神ペレのタタリに違いない・・・。」
とまたひと言をつぶやいておりました。
ブルー・サンド・ビーチがあったとしても行きたくない支店長より
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投稿: kachari -2007年4月17日 (火) 08時10分
■お疲れ様でした
大変でしたね…でも、ちょっと面白記事でした(~_~)グリーンサンドビーチの存在、初めて知りました!いいものを見せていただきました。ありがとうございます! -
投稿: meme -2007年4月19日 (木) 01時13分
■やっぱりペレのタタリって・・・
うひゃっ。私も溶岩ウォークに参加した際、太陽のヒカリを受けて青くキラキラ輝く溶岩のカケラを見て、思わず持ち帰りました(^∇^)みんなに「キラウエア火山のエネルギーをお持ち帰りしてあげたい!」と思って、歩きながら集めたのですが、日本に帰ってひどく迷惑がられたのを思い出しました(TωT)誰ももらってくれず、今でも机の中に置き去りです。 -
投稿: 悠花 -2007年4月21日 (土) 01時28分
■女神のたたり・・・・
さすが、スピリチュアルな島だけあって、みなさんそういうことを信じていらっしゃるんですね。でも、さすがにみんなにそういうことを言われたら、怖くなっちゃいますね。私はハワイ、未体験ですが今後、気をつけま~す! -
投稿: ichigochan875 -2007年4月21日 (土) 02時37分
■私の友人も・・
私の友人はかけらを持ち帰り、日本に帰国後まもなく脚立から落ちて骨折してしまいました。その後、溶岩のかけらをガイドさんに送りつけて元あった場所あたりに戻してもらったそうです。ハワイに住んでいると一度は必ずこういったお話を耳にしますよね。