『8月4日、きんこうわんおうだん遠泳があった。楽しみであって不安であった。出発前みんなでカウントダウンをして泳ぎはじめた。私は本当にきんこうわんを泳ぎきるのが心配だった』(清水小学校6年生 福吉さん)


green traveler編集長の鮫島です。


私のふるさと鹿児島では、毎年市内の小学生が桜島から対岸の鹿児島市内の浜まで約4.2kmを泳ぐ横断遠泳が毎年開催されます。挑戦するのは小学4~6年生の子どもたち。汗と涙のもう特訓を経て、海への切符を手にした子どもたちだけが錦江湾横断遠泳に挑みます。


“自然を愛する”エコなブログ-桜島

4.2kmとは歩いても約1時間。潮の流れを考えると、実際にはもっと長い距離を泳ぐことになります。10歳そこそこの小学生にそんなことができるのか??。できます!しかも毎年恒例なのです。


練習は5月のゴールデンウィーク明けから開始。直前までほぼ毎日の厳しい練習に励みます。鹿児島には昔から「郷中教育」と呼ばれる伝統的な教育慣習があります。「郷中教育」とは薩摩藩の時代から教育慣習で、地域単位で青少年が自主的に学問や剣術を学び、その集団の中のリーダーが仲間を指導するものです。青少年を親の世代が教えるのでなく、自分たちで考え行動することに味噌があります。こうした藩風が西郷隆盛や大久保利通などの英傑を生んだとも言われています。この遠泳は「先輩たちや経験者が年下を見守る」郷中教育の精神が受け継がれています。最近は子どもたちの学校行事を教師と保護者たち取り仕切るのが当たり前ですが、この遠泳を取り仕切るのは教師、卒業生、保護者たちが中心となった水泳同好会です。教師任せでもなく、親がべったりで口を出すということでもありません。俗に言う「地域で子ども育てる」仕組みですね。


タテ社会が希薄になりつつある現代では、貴重な存在かもしれませんね。


『岸では楽しみも半分ドキドキも半分でした。でも、海の中ではプカプカういたり、波があったり、さくら島がキレイだったりして、半分のドキドキも消えていきました』(清水小学校4年本田さん)


現在、遠泳を実施するのは市内の2つの小学校だけになりました。それでも約100人の子どもたちが厳しい練習を乗り越えて挑戦します。練習の段階で一定の条件をクリアした検定合格者だけが本番に挑戦できます。なので、実際に挑戦する子どもたちは「不安」より「自信」の方が大きいのです。その先輩の姿を見て、低学年も僕もああなりたいと思い、練習に励みます。


一方、お母さんたちに目をやると、表情の奥には緊張と不安が見え隠れ。少し涙ぐんでいる人までいます。それはそうですね。自分の子どもを大海原に放り出すようなものですから、気持ちもわかります。そこをグッと堪えるのも親の務め。


スタート前、先生が子どもたちに語りかけます。「日焼けはうそをつきません大丈夫です。みんなが君たちを見守っています」


遠泳の隊列はゆっくり前へ進んでいきますが、潮の流れに押し戻されたりしてプールのように一筋縄にいかない場合もあります。それでも漁船に乗った応援団が声をかけながら少しずつ前へ前へ力強く進んでいきます。


ゴールとなる海水浴場では、家族や下級生が大勢出迎え。鼓笛隊による『我は海の子』の演奏が鳴り響きます。声をからして呼び続ける親に気づいた子が海の中で照れくさそうなシーンも。


基本的には全員完泳。泳ぎきった子どもたちは、本当にたくましく見えるのです。きっとこの1日は一生ものだと思います。泳ぎきった子どもたちを包むように、普段男性的な大きな桜島も、なぜかやさしい表情に見えます。




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    • 投稿: ジーメイ -2011年9月 1日 (木) 18時43分

      ■あー聞いたことあります
      以前観光に行った時、地元のガイドさんが話してました。かなづちな私からすれば尊敬もんです。茶碗蒸しの歌(?)も歌ってくれましたよ~

    

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