ポーランドの古都クラクフは、スピルバーグ監督の映画「シンドラーのリスト」で描かれたドイツ人実業家オスカー・シンドラーが奔走した舞台でもあります。
▲旧オスカー・シンドラー琺瑯工場(Oskar Schindler's Enamel Factory)
こちらがオスカー・シンドラーの工場跡地、現在は博物館になっており、シンドラーのことだけではなくドイツ占領下のクラクフの関する資料が展示してあります。
▲真ん中に立っているのがオスカー・シンドラー
ドイツ人実業家だったオスカー・シンドラーは、1000人以上のユダヤ人をナチスから守りその時作った従業員のリストが「シンドラーのリスト」と呼ばれています。
そんなに混んでいないだろうと思っていたのですが博物館にはオープン前から列が出来ていました!
年齢もバラバラで、多くの人が英語でスタッフと話していたことからポーランド外から訪れた人もかなり多いかなという印象です。
映画でも印象的なセリフだった「Whoever saves one life, saves the world entire.(一人の人間を救う者は、全世界を救う。)」も、実際に救われたユダヤ人たちから送られた指輪に彫られた言葉だそうです。
当時のユダヤ人ゲットーの映像も上映してあります。
人々が生活があって時々笑っている女性や遊んでいる子供たちが映っているのが印象的でした。
オスカー・シンドラーについての書籍やコラムを読むと、「“結果的に”ユダヤ人を救った男」という一文をよく目にします。
31歳だったシンドラー、元々は戦争に便乗してお金儲けのためにクラクフへやってきて、ホーロー工場を買い取り、そこでタダ同然で使えるユダヤ人を雇いました。
ナチス党員だし女遊びをしまくり贅の限りを尽くし闇取引や賄賂もやってのける、あまり善人とはいえないシンドラーの様子が映画の前半で描かれていました。
最初は利己的な理由でユダヤ人を雇ったのかもしれませんが、彼の心境に変化があらわれ最後は全財産をはたき、かなりの危険をおかしながらも従業員を守るため奔走します。
軍需工場によって莫大な財産を築いたシンドラーでしたが、ユダヤ人を救うためお金をバラまきまくり終戦の頃にはほぼ一文無しになっていたそうです。
映画では「心境の変化」の大きなキッカケとして赤いコートをきた少女と彼女の死が描かれています。
シンドラーが37歳のときに終戦、ユダヤ人は自由にナチス党員だったシンドラーは追われる身になります。
▲館内でも特にヴィジュアルインパクトのあるナチスのハーケンクロイツ
その後、シンドラーは新天地でまたビジネスをスタートさせますが失敗の連続。
53歳のころにはついに資金繰りに困窮、それを知ったユダヤ人達が今度はシンドラーに手を差し伸べ66歳で亡くなるとエルサレムのカトリック教会に埋葬されたそうです。
オスカー・シンドラーという人物が映画の中のキャラクターで完全に止まっていたのですが、この博物館を訪れて「現実に起こったこと」という実感がわきました。
映画好きな人ほど心当たりがあると思いますけど、映画を観て全てを知った気になってしまい逆に現実と完全に切り離して考えてしまう事が多々あると思うのですが…
▲館内に5箇所ある当時のスタンプを使ったスタンプラリーのようなもの
そういう錯覚から抜け出すためにも、この博物館にきてよかったと思います。
博物館の展示はかなり凝っていて、まるでさっきまで人がいたような気配のある演出が見事でした。
当時の新聞や何気なく置いてあるコートや帽子、誰かの所有物だったと思われるものの数々によってまるで1940年代にタイムスリップしたような気分になります。
それと同じくらいテクノロジーや人の目の錯覚を利用した展示もあって、キュレーターすげー!となりました。
子供がきても退屈せず興味を持って学べる博物館になっていると思います!
▲実際に製造していたホーロー製品!
この展示は映画のなかのでシンドラーがひとりぼっちになったシーンを思い出します。
▲シンドラー執務室(再現)
シンドラーは幼少期、近所のユダヤ人の子供が遊び仲間だったそうです。
どういう理由があってシンドラーがユダヤ人を助けようと決心したか色々な説がありますが、個人的には子供の時の親しかった友人やその家族の思い出も少しは作用したのではないかと思います。
▲等身大の当時の人々の写真、街中にいるような錯覚に陥ります。
映画「縞模様のパジャマの少年」に描かれたような先入観や既成概念がない子供時代の思い出や記憶が最後良心になることもあるのでは…と思います。
この博物館は一方の意見を展示を通して押し付けてくるのではなく「もし自分がシンドラーの立場だったら」「もし自分がユダヤ人だったら」「もし…」と想像力をかきたてて、違う立場の人の事を考えるキッカケがたくさん仕込まれていると感じました。
そしてシンドラーだけではなく、当時ナチスの狂気が渦巻く様々な国々で(国籍を問わず)多くの人々が自分の会社のユダヤ人とその家族、ご近所さん、友人だけでも救おうとした記録は多く残っています。
▲シンドラーの工場の従業員の写真、笑っている写真が多いのが印象的。
国家単位や人種で考えると違う世界のように感じますが、もし会社で大多数から仲がいい同僚がイジメられてたら自分はどういう行動をとるだろう?
自分がいじめる側だったら?自分がいじめられる側だったら?と置き換えるとわかりやすいかもしれません。
会社なら最悪辞めればOKですが国家単位でそれが起きそれが命にかかわる事だったら、大多数の人がもしかしたら行動しないという選択肢をとるのではと思います。
見て見ぬふりがこの歴史的惨劇を助長したというのが何となくわかりました。
▲ユダヤ人の子供の写真と彼らのおもちゃ
ユダヤ人の悲しみやシンドラーの苦悩に共感出来る方はともかく、私は人の気持ちを想像したり、共感したりがあまり上手じゃなので、この博物館にこれたのはとても良かったと思います!
▲プロパガンダポスター
プロパガンダポスターは内容は置いといて、デザインも画力も相当優れているものがかなり多い(これは国を問わず)ですが描いていたアーティストやデザイナーはどんな心境だったのかなあ、といつも思います。
もしかしたらノリノリで描いてたかもしれないし、おかしいと思いながらも断れず筆を走らせていた人も多かったのかもしれません。
元々志をもって美術の世界に飛び込んだのに、プロパガンダポスターを描く事になった時はどんな志を持っていたのだろうといつも不思議に感じます!
ナチスグッズ
ナチロゴ入りのお皿など当時使われてたものも展示されていました!
グッズとよんでいいかわかりませんが、ナチ関係のものが生活にあるのが当たり前の時代だったんですね~今見ると何とも不思議。
「我が闘争」?なんの本だろう…。
▲ヒトラーの肖像画や書籍。
こういう肖像画関係は描かれている人物が誰であれ、実物よりハンサム気味に描くのはいつの時代も一緒ですね~。
床にはハーケンクロイツがびっしり。
ヨーロッパで手をあげるときは人差し指を使う
ナチス式敬礼がもとで、今でもヨーロッパでは授業中に意見を言いたい時、店員さんを呼ぶ時に手をあげることはよく思われていません。
右のように人差し指をあげてアテンションを求めます。
これを知らずイギリスの大学で学生をしていた頃、授業中手をあげてクラスメイトのアイルランド人が真っ青になって「ダメダメ!」と言われた思い出があります。
破壊されたクラクフの街
古いクラクフの写真なども展示してありました!
「今も昔もそんなに変わらないんだな~」と思ってたのですが、ワルシャワほどでないにしろクラクフもナチスによってかなりダメージを受けた街です!
「躍動感やべ~」と通りかかるたびに笑ってたポーランド王の銅像、ナチス侵略時に粉々にされた写真と一部が展示されていました。
旧市街地にたってた銅像も、もげてるー!
▲粉々になった銅像の写真、すごく悲しい。
この時はすっかりポーランド大好きになってたので胸が痛みましたが、来る前のポーランドのことを全然知らない状態でみたらそこまで何も感じなかったのかも、とも思いました。
知ってるか知っていないかで感情移入の幅がここまで変わるとはこの対象が、銅像じゃなく人だったら…と思うとちょっとこわくなりました。
今おこってる難民問題がぼんやり頭に浮かびました。
▲ドイツ占領下のクラクフ駅の看板。「Hbf」はドイツ語の「Hauptbahnhof(中央駅)」の略。
ポーランドはかなり複雑な歴史をもっていますが、いまある美しいポーランドをみると人々が努力し取り戻した美しさなんだと感じました。
エマリア製品の起源!オスカー・シンドラーのホーローマグ!
エマリア・オルクシュ製品好きとしてはかなり嬉しいオスカー・シンドラー博物館ロゴ入りホーローカップゲットー!
やったー!可愛いー!エマリア仲間のなかで自慢しまくり!
クラクフゲットー
昔ゲットーだった場所はユダヤ人街カジミェシュ地区として今現在も残っています。ここは「シンドラーのリスト」の撮影地で、スピルバーグ監督が撮影中通ったミルクバーなど色々調べて行くのを楽しみにしていたのに時間が足りず行けませんでした…
映画オタク、ショックすぎて大泣き。
◆旧オスカー・シンドラー琺瑯工場(Oskar Schindler's Enamel Factory)
ul. Lipowa 4, Krakow 30-702, Poland
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